ゴースト×ゴースト短編小説、傷の正体

何がどうなってだったか忘れたが、僕はどうやら怒られているようだった。
少しだけ淡さの異なる青髪を持った二人の少年達が、僕を見ている。
兄弟かと思ったが目付きの違いもこの性格の違いも相俟って恐らくそうでもない。
ソウルと名乗った一人は、初め口を開いた時から五月蝿く怒鳴り続けているし、もう片方は、口を開こうともしなかったけど。

「...どういうこと?」
「世界を創るあんたらが人間をいたぶって楽しいワケ?」
「...つまり?」
「だから!あんたが創造神なら、邪神の行動もあんたの監督責任だろ!」
やたら食い気味に主張を続けるソウルだが、どうやら足に深い傷を負っているようで、立ち上がることは無かった。
無造作に巻かれた血の滲んだ白い包帯が、酷く痛々しい。
僕が此処に来たのは特に二人に会いに来たとかではなかったのだけど、創造神と名乗った矢先、ソウルはこの状態だ。
もう数十分は罵声を浴びせられていると思うが、半分は耳を抜けてしまっている。

「...確かにやり過ぎだとは思うけど...」
思うけど、彼は現在どうも精神状態が不安定で、一言加減しろと言っても事は収まらない状況にある。
全くの関わりのなかった彼の言うことより、レディアの言うことを優先させるのが当然だろう。
それに加えてこの傷がレディアの仕業と言うなら、彼等がレディアにとって敵であるに違いない。

それに見る限りではソウルは子供だった。外見も、それにしっかりと見合った性格と意見も。
それを思うと、言っていることが確かなのかも定かでない。

「...言いたいことは分かった、どうにかしよう」
こういうのは簡単な言葉でまず事を収めることが重要だと思う。後々詳しく調べれば何らかの取り返しはつくのだから。

...それよりも僕は、気になることがある。

「...ところで、君はフロウか?」
そう問えば、大きく肩が跳ねるのが見えた。
最近はレディアと、その周りの状況を理解するのに時間を費やしているから、このフロウとか言う人間のことを知らなければ何かと事が進まなかった。
反応からして名前と本人が一致したことは分かったので、それだけで十分に思えた。

ソウルがレディアへの不満をこうも詳しく長々と語れるのは、本当にレディアと接触しているからだろうと思う。
だから、レディアがこの二人を傷付けたと言うのは、恐らく間違いない。
フロウらしいこの人間の腕にも、裂けた白い服に紅い血が滲んでいる。

「......そうか」
僕が返事もない彼に、一方的に告げると、また不安げに顔を歪めた。
そんな彼との間に入るように、ソウルはまた声を上げたのだった。
「とにかく!お前があいつの味方なら俺達はお前も許さねえし、絶対にお前達を倒す!!」
また冗談なのかよく分からない台詞を吐きながら突っかかってくるソウルに、僕はただ返事をした。
確かに、ここまでの傷を負ったなら、気持ちを理解出来ないわけでもないけれど...。
でも彼への言葉は、まだ良く考えなければ、またこの二人にも、彼にも、僕にも被害が及ぶことだろう。
...思ったより遥かにこの問題は、複雑で難解なようだ。

僕はまだまだ、小さな反逆者の怒鳴り声を聞き続けた。