2017-01-01から1年間の記事一覧

ゴースト×ゴースト小説、No.1

麻酔に堕ちるこの感覚を、誰かが幸福と言った。 又、俺はそれを信じていた。人間は人間をつくり変えて、新しい人間を造った。 俺は間違いなく此処に居るのに、俺を【改造】したと言った。 ...何も変わっていないのに。俺は外を知らなかった。無機質な音を数…

ゴースト×ゴースト小説、幸福理論

「君は頭が悪いからね、此処にしか居場所はない。」 そう言われた日の事を、今日まで鮮明に覚えている。こういう嫌な記憶は消してくれないのに、俺の記憶は、この言葉から始まっている。 俺に過去の記憶はない。消されてしまった。過去に縋ることが出来なく…

ゴースト×ゴースト小説、願いの手

「反抗期なんですよ」 事あるごとに、そう言われる。 人を治す度に、人を助ける度に、俺が反発をして、舌打ちをすると、親もそれ以外のヤツもみんなそう言う。 ...別に生まれてからずっとそうだよ。親とまともに喋ったことなんて無い。誰かを助ける予定を勝…

ゴースト×ゴースト小説、奇跡のドール Ⅹ

いつもなら一瞬で終わってしまう一日を有り得ないくらいに長く感じながら、私は彼女と出来る限りの会話をした。 終わりが分かってしまえば、後はそれに合わせるだけだ。終わるまでを精一杯に生きるだけで。 だから、彼女は今日終わるなんて信じられないくら…

ゴースト×ゴースト小説、奇跡のドール Ⅸ

時が流れるのはとんでもなく早かった。 ベリーの子供が大きくなるのも、ベリーが...死ぬのも。 何度も人間が死ぬところは見てきたが、彼女が死ぬのはなんだかとても惜しかった。 リリアが隣で大泣きするものだからそれは尚更で、此方まで恐ろしく辛かった。 …

ゴースト×ゴースト小説、奇跡のドール Ⅷ

リリアはあの後から、少しずつ笑顔に影が見えるようになった。 死という概念の存在に気付き、そして別れの恐怖を知った彼女が可笑しくなっていくのを何処かで感じた。 確かに、元気にしてくれてはいた。私に心配を掛けたくなかったのかもしれないし、自分の…

ゴースト×ゴースト小説、奇跡のドール Ⅶ

部屋の中には、綺麗に彩られた本が数多く置かれていた。 カラフルな目に悪そうな色の表紙から、思わず眠たくなってしまいそうな優しい配色のものまである。 それ故全てがベリーの旦那さんが描いたものではないのだと、すぐに分かった。 これだけ上手く描けれ…