ゴースト×ゴースト(短編)小説、奪われたモノ

いやー!衝動書きってヤツ??
はーい、前回の成りから記憶喪失ネタ、衝動書きでは珍しく飽きずに最後まで書きました。
色々妄想してたんですけどね、スルーしてもいいので聞いてください…。
どうしても私重い愛とか報われない恋とか好きみたいで…ははは←
全然ソウルはフロウのことを踏みにじってくれていいんですけど!むしろそれが好きです!!でもあの、偽りの愛でフロウと色んなことしたりする内に初めて普通の楽しさとかに触れたソウルが痛み通り越して無意識にフロウ好きになってしまってるのとか大好きです。 痛いの我慢できなくて裏切るのに裏切っても痛みが消えなくて…みたいな←
雑談で書けって感じ!!すみません無視してください、言いたかっただけです…ソウルはストレートにゲスです!!!
ということでやっと本編です…本編も前書きも長めでごめんなさーい!!



ああ、ここはどこだ?俺は一体何をしてたんだ…。
妙にぼんやりして、寝起きだからと言うだけではないようなふわふわした感覚に手の平で目を覆った。

「ああ、起きた?」
視界を覆ったばかりの自分の耳に、そんな声が聞こえた。
驚いて肩が跳ねてしまう。反射的に手を下ろせば少し機嫌の悪そうな顔が見える。
なんだか見覚えがある気がするんだけど…なんだったかな。

「あ、え…えっと…」
自分が目を覚ますのを待ってくれていたのかと思うとまず謝ればいいのか礼を言えばいいのか分からず、言葉が詰まってしまった。
そうしていると目の前のそいつは困ったような不思議そうな顔をするので恥ずかしくなって結局俯いてしまう。
あーあ…意味ないなぁ…。

「えぇ?なんでそんな顔赤いの?」
退屈そうな顔をしていたそいつはやっと笑って、からかうように言ってきた。
そういえば顔が熱いような…。
「…謝るか、礼を、言おうと思って…」
ハキハキ言おうとするのに、結局だんだんと声が小さくなっていってしまう。
でも何とか届いたようだ。頭の後ろで腕を組むそいつは少し考えながら話し出した。

「ふーん…、『ゴメン』と…なんだっけ?…アレ、アレだよ、そう!『ありがとう』だ!」
「……え?」
「ああ、出てこないんだよ。人を労わったりとかそういう言葉が咄嗟に。」

…なんだ、こいつ…。
よく見ると、頭から爪先まで人間らしさに欠ける奴だ。
ありがとうも知らない人間が居るのか…なんだか、変な話だな。

「可笑しいと思った?」
こっちを見て笑いながら聞いてくるそいつの言葉にハッとした。
「いや…」
「思ったでしょう、じゃなかったら今のタイミングでぼーっとしないよ。」
…まあ、確かにそうか…。
なんだか、こう、見透かされる感じ…覚えがあるような無いような気がする。

あれ…なんだっけ…、何か大切なことが抜け落ちてるような…。

「…なんか悩んでんの?」
また声を掛けられて意識がこっちに戻ってきた感覚がする。
まあ、いいか。考えてもどうせ分かんない。
「なんもないよ。」
自分の誤魔化しが下手なことは分かってるけど、でも今回は嘘というわけでもないし大丈夫かな。

「…あっそ。」
変な間があったことには少しどきっとしたが、返ってきたのは素っ気ない言葉だった。
これは…上手い言葉が出てこなかっただけかもしれない。ついさっきそう言っていたし。

「下手クソだね、お前。」
「な、何が…?」
「嘘が。」
そう言って舌を出すそいつの顔を見て、またなんとか誤魔化そうかとも思ったが結局バレそうだったので何も言い返せなかった。
それを見てまた面白そうにそいつは笑う。

「まあ、いいや。…名前、なんて言うの?」
「フロウ、だけど…」
「へえ、そう。俺はソウル。」
「ソウル……」
やっぱり勘違いかな、なんか…やっぱりこいつと何かしたとかは出てこない。

「さっきまで何してたの?」
その質問には少しヒヤリとした。
今は…なんだか思い出せなくて…。
「……さっき…って…」
なんだったかな…、俺は何がどうなってこいつと一緒に居るんだ…?

うんうん唸る自分を眺めているソウルは笑っていた顔から笑顔を消して、手で制した。
「思い出せないならいいよ、無理するな。」
眼前に突きつけられた手の平しか見えず、ソウルの顔は見えなかった。
一体こいつはどんな顔をしてそんな台詞を言うんだろう。

「…ゴメン…。」
「なに謝ってんの。仕方ないでしょ、さっき目が覚めたんだし…。…今は寝てれば?見ててあげるから。」
想像以上の優しい言葉になんだか驚いてしまった。…なんだ、いい奴じゃん…。
「その内思い出せるでしょ、……大丈夫だよ。」
「…なんでそんなに親切なの…?」
顔は意地悪そうにしてるこいつの口から、ぎこちなくでも出てくる言葉はなんだか怪しいくらいに優しい。

「なにー、嬉しいの?」
「いや…」
「……失礼だよね、その辺で倒れてる人間を拾って放置とかできないよ、いくら俺にも。」
照れ隠しなのかなんなのか、べー、と舌を出してそう言うソウルの顔を見ると、疑うのも申し訳なくなって自分も笑って見せた。
そうしてやると、そいつはなんだか焦るような、困ったような顔をして目を逸らす。

目を閉じると急に疲れを感じる。人と話すことはとんでもなく疲れることだ。

それに、自分を助けたらしい、ソウルとか言う奴。
…もしかして人に慣れてないのか。態度も口調も、どことなく堅い。
もっと言えば、初めて会った気もしない。どこかで、前に会った気がするのに、気がするだけで記憶はない。

ああ…俺、今日はホントにどうかしてる。
絶対に、あったはずなんだ。何か、何か俺を苦しめていたことが、守らなければいけない何かが。
今まで、今日まで生きてくるのが本当に辛かった。
なのになんだ?全くと言っていいほど心当たりがない。
確かに、ずっと昔の過去にも嫌な思い出はある。…でも死ぬほど我慢できない訳じゃない。
嫌過ぎて嫌過ぎて、遂に忘れちゃったのかな。
…考えても仕方ないから眠ろう。忘れたのはきっと忘れていいことだから忘れたんだ。
俺が考えても仕方ないことだ…。


そしてソウルは、眠りについたフロウの顔を覗き込んで、笑っていた。
「さっすが邪神、ちゃんと仕事するじゃん。」
鋭く尖るような歯を見せて、堪えるように笑う彼の目は冷たく光る。

「……だけど流石に痛えなぁ…、お前の愛は誰よりも深くて純粋で。」
傷付きやすくてどうしようもなく脆い心を持っているのに、お前は何故心の底から他人を愛す?
顔にかかる空色の髪を梳いて、愛と盾を奪われた顔を眺めた。まだ何も知らない、綺麗で幼い心が見えるようだ。
「さあフロウ、お前は私だけの為にその愛を捧げて、俺だけの為に泣いて、僕だけの為に死ぬんだよ…。」
私もその為にちゃんと痛みも苦しみも我慢するよ。いつか君がくれる快楽の為に。

少年はまだ何も知らず、眠る。