ゴースト×ゴースト小説、神様の探偵ゴッコ

城に戻って資料館っぽい所までそれなりに長い廊下を歩いた。

思えば資料館がこの城にあるとすれば、このあと人間が創られるのかも分かるかもしれない。
そしてもし人間が創られるなら、この世界は、この城は、その資料館は人間の原点になると言うことだ。
俺の生きていた世界にももしかして原点があったのか。あの狭く窮屈な島を創った誰かが居たのか。
人間だった頃はそんなこと一度も思わなかったな。
また人間が創られて、その世界が終わるまでの間自分は生きるのか。
何度も繰り返し、繰り返し世界が創られて新たな命が生まれて尽きるなんて、美しくも残酷だ。
そしたら一体何度繰り返すのだろう。俺のように二度命を授かる奴が何人出るのだろうなんて。

そんなことを思いながらその『資料館』に行き着いた。

(…広いな)
本棚、と言えばそうだが高すぎる。神なら飛べと言うことか。
身長の何倍もある本棚がずっと先まで続いていた。一体そんなにあって何が書いてあると言うんだ。

手始めにイングリーネはすぐ隣にあった本を開いた。
デヴィーセとカルルも顔を寄せてくる。
「何て書いてある?」
「ん…、その日はある男に出会い、後に結ばれ子宝に恵まれる……?」
「しかし?その後、すれ違いが生まれすぐ別れ……ってなに?」
カルルは全く意味が分からないと言うように首をかしげたが、イングリーネはなんとなく察していた。
デヴィーセはもっと理解していたが。
「…前世、かもね。僕は記憶があるけど人間だったときの僕と同じ世界に生きていた人の、いわゆる…運命?」
運命、か。
ここに書いてある通りに生き、死んでいった者の運命と言うわけか。

…じゃあ、ライカの運命もここに…?
そう思ったがそれは、知りたいようで知りたくなかった。
イカは幸せに死ねただろうか。気の合う誰かと出会い、結ばれることが出来ただろうか。俺が居なくなっても、もう甘えることなく生きていけただろうか。
…もう、今は何処にも居ないんだから何を知ろうと無駄だが。

「きっと誰かの運命以外のことも見つかるはずだから手分けして探そう。」
デヴィーセが気を取り直してそういった。カルルもイングリーネも短く返事をして、それぞれ歩いていった。
数が多すぎるので隅から隅まで見るというのは不可能だが、恐らく今日以外にも来ることが出来るはずなので三人ともそう焦らなかった。
誰のものかも分からない運命を意味なく読んでみたり、それにどこか涙を流したくなったり、笑いたくなったり。
カルルやデヴィーセこそ、この世界のことを必死になって探していたが、イングリーネは然程興味が無いのでどこかの誰かの運命を読み漁っていた。

(改めて思うけど、本当に不公平なもんだな…)
とんでもなく幸せそうな人生を送った者も居れば、思わず目を塞ぎたくなるような者も居た。
人に死を泣かれた幸せ者も、笑顔を忘れて死んでいった哀れな者も、誰かを守るため死んだ優秀でありながら不幸な者も、全て同じだったはずなのに。
イングリーネはただその文字の羅列を見つめるしか無かった。

(何故、俺は今生きているんだろう…。神になる資格がどこにあったんだろう…。)
確かに人の為に死んだ立派な奴だったかもしれない。
でも、この本の中にはもっと俺より神になるに相応しい奴が居る。
あんな狭い島の中でしか生きられなかった俺にいきなり世界を背負わせるなんてどういうことなんだ。

世界ってなんだ。神ってなんだ。
神に祈れば叶うのか。俺がこの本の中の世界の神なら、あの人間だったとき神であったなら、人間の祈る声を聞けたか。俺より数倍不幸だった奴を助けてやれたか。
この文字通りのことが目の前で起きていたら救えたのか。

無理だ。俺にはきっと出来ない。今までも、きっとこれからも。
そして人は俺を恨むのか。救ってくれなかったと泣くのか。
それを何千、何万と俺は背負うのか。
そして、世界が朽ちるまで俺は解放されないのか。

「そんなの、無いよなライカ…」

お前を救った気で居て、もう死ぬのに良いことあるんじゃないかと思ったよ。
幸せにあの世でやっていけると思ってた。
でもさ、違ったのかな。流れ星に願ったあの言葉は俺が思ってたより重かったのかな。

「ゴメン…」

ただ、その言葉が零れてしまって。
あの日なんの別れも無しに出ていって死んでしまって、寂しい思いをさせたよな。
そんな俺が今情けないこと、思ってるよ。
あんなにカッコいい、お兄ちゃんだったのにさ。
お前が頼りにしてた、お兄ちゃんだったのにさ。

「…お兄ちゃん、怖いよライカ…」

初めて神としての不安を感じて、押し潰されてしまいそうなんて。
初めてお前に対する罪悪感を感じて、寂しさに襲われそうなんて。
今は、そんなことしか思えないよ。

雷神は本棚の陰で静かに涙を流した。


☆あとがき
話したくなったので書きます←
あとがきくらい毎回書こうかな〜とか思ってるけどなかなか…;;
はー…と言うことで! 最近はイングリーネ目線が多いな〜なんて(笑)
彼でも泣くんですねー…はは、なんだかんだで責任感強いしやっぱり色々思うところもあるのかなーと…
それに今日の話、一度目の世界が記された本がギッシリでしたね〜
と言うことは前考えたフロウやレディアくんの辿った運命が記された本もあると言うわけですね!
言ってしまえばフロウもここに来れない訳じゃないんですよ、神の世に来るには神であればいいんですから〜なんて!
あ〜…あとフロウ関連で言うと、自我の無い暴走って言うのはいいよな…って妄想してました…あの紅い宝石の発動条件は?から派生しまくって生まれた妄想ですが…まあそんなことはどうでもいい!
あとがきめっちゃ長くなったけど、次回はデヴィーセが世界を知る為の第一歩を踏み出す…?かもしれない!
ではお楽しみに!お付き合いありがとうございました!!