ゴースト×ゴースト小説、創造神こそ、頂点。

「ウォリスー居る?」
デヴィーセはまるで前から友達、とでも言いそうな風に呼びかける。
馴れ馴れしすぎはしないかとカルルは不安になったがデヴィーセに言っても「いいんじゃない?」とか言いそうなものなので特に触れはしなかった。
少しだけ立って待っているとゆっくりとその扉が開いた。
部屋の中がどんどん見えてくる。扉の大きさに比べては案外小さな部屋で、一人の女性は椅子に座って外を眺めていた。
「こんにちはウォリス。」
部屋の中に入る訳でもなくそう話しかけるが彼女から返事は無い。

「開けてくれてありがとう。あなたは創造神で良かった?」
デヴィーセは相変わらず淡々とそんなことを言うのでカルルは黙って見守るしかなかった。
どうにもデヴィーセを見ていると冷や汗が出る。天然なのかわざとなのか知らないが馴れ馴れしすぎる。
「そうよ、ようこそ」
窓の外を見ているので顔が見えない。でも、その声が澄んだ水のように美しい。目の前に広がる世界が絵本の一ページのようにさえ見えて。
「中に入ってもいい?」
デヴィーセが全く変わらぬ笑顔でそう言う。
「いいわよ」
ウォリスは短い返事をした。デヴィーセは嬉しそうに「お邪魔しまーす」なんて言って足を踏み入れる。カルルもついつられて足を前へ進める。
「とても美しい部屋だね」
周りを見渡したデヴィーセがふと呟いた。誰に向けて言ったのかも分からない。
太陽の日差しを受けて全てがキラキラと輝くこの部屋の中では全てが夢のようだ。
そもそも、まだ夢か現実かデヴィーセはいまいち分かっていなかった。
神になったことは現実なのか、理想の世界が創りたいが故に見ている夢か。

自分以外、人間だった頃の記憶を持っている様子が無い。まるで今までずっと、この世界の神だったかのようにそこに存在している。
少し、違和感があるだろう?
「質問してもいい?」
「なにかしら」

「この世界は一体なに?」

彼女はそれを知っているのだろうか。カルルはひやひやと此方を眺めているし、ウォリスはようやく僕たちに目を向けた。
それは白銀の、透き通る瞳。
「それを知ってどうするの?」
「知りたいことに理由が要るの?」
デヴィーセとウォリスの視線が交わって、少しの間が生まれた。
彼女はきっと答えてくれない。僕はその未来を知っている気がした。
「自分で調べてみたらどう?」
「…どうやって?」
何も知らない世界で何も知らない僕が一人で探し物をしろと言うのだろうか。
とてもじゃないが無理だ。世界は広い。
「簡単よ。この城に住んで、隅々まで調べてみなさい。きっと、本当に知りたいのならあなたに見えるはずよ。」
「この城の中に答えがあるの?」
「そうよ、あなたの知らない事がたくさん分かる。知りたくないことまで全部、きっと分かってしまうわ。」
不思議なことを言う奴だ。まるで全部知っているようじゃないか。
少し困ってしまって、カルルのほうに目を向けると、彼女は全く意味が分からないというように一人で情報を整理していた。
時間を越えてもきっと本当のことは分からないんだろう。
彼女はきっと、この世界の中で誰よりも、全てを知っているんだ。…きっと。
「ふーん、ちょっと面白そう」
神なんてきっと無駄に長生きするんだ。暇つぶし程度にちょっと遊んでみようか。

「僕、探してみるね。あなたのことも、全部。」
時空神はニヤリと笑った。