ゴースト×ゴースト小説、神が生きるための神。

「なあデヴィーセ、イーくんがおらんけど…」
「またまた分岐点だねぇ」
まっすぐ伸びる廊下に二人の足音が響き渡る。
声も綺麗に反響して、神秘的だと、人間ならそう呼ぶだろう。
「そうなん…?デヴィーセって何もかも知ってるの?」
全てに余裕があるような口振りをするデヴィーセと話していると、彼が何もかも知ってるようにさえ見える。
知らないことがない…それを完全無欠と言うのか。

「君はどう思う?僕が今、この世界のこの時間に存在して…世界の終わりまでの全てを知っていると思う?」
彼はカルルの少し前を行くが振り返ることもなく質問を投げかけた。
だがカルルが答えを出す前に言葉を続ける。
「何もかもを知る存在ってどういうものだろうね?完璧なのかなあ、でもちょっと違う気もするよねぇ。だけど実際僕は神だし、完璧であっても罪ではないのかもしれなーい。」
適当なようで、なにか深い意味があるようで、またカルルは考え出す。
もしもデヴィーセが完璧なら、完璧ではない自分が考えたところで到底理解などできないのかもしれない。
「なに言ってるのかよく分からんけど…」
それが率直な感想だった。だけどその言葉にはデヴィーセがようやく振り返って笑った。
「うふふ、僕もよく分からなーい。だって自分が完璧だと思ってる奴こそ完璧じゃないと思わない?」
また質問。だけどもう考える気にもなれなくてカルルは首をかしげた。
「少なくとも、僕が人間だった頃はそうだった…かも。」
またまた、そんな意味の分からないことを言う彼を見て、遂に溜息が出た。
「もうよく分からんわ…なに言ってんのかさっぱり。」
「だろうね。僕は君が理解できないはずの話をしていたもの。時空を支配する者の話を炎を支配する者が受け入れるはずないじゃない。」
カルルには理解できない。元々人間の思考を持っているデヴィーセの話が神には通用しないのだろうか。
神は人より優れているはずなのに。

「だってね?僕たちは神だけど、各々を司る為にしか存在しないんだよ?全てはウォリスにとって好都合になるように創られた駒。知らなくて良いことは理解できないようにそう創られたんだよ。その方がウォリスにとっては楽なんだから。」
その、ウォリスが居るであろう扉の前に二人は立った。
「自由があると思っちゃいけないんじゃないかなあ。神って、案外息苦しいと思うよ。…僕は。」
そんな風に、彼は言うのに。
息苦しいなんて、彼は言うのに。

なんで笑ってるの、なんて聞けはしなかった。