ゴースト×ゴースト小説、キミが居てもあの子は居ない。

ああは言ったものの、女と二人っきりではすることも何もない。
人間という立場じゃなくなった分、神として何をすべきか全く分からない。
そしてまだこの世界に人間は存在していない。
「やっぱり、賢い奴の下につくのが一番いいのかなぁ…」
自分から何かするなんて面倒くさいし、神にだったら尚更上下関係が厳しそうだ。
こんな世の中で永遠と言う時を生き続けるのかと思うと気が遠くなる思いだった。
動く前から疲れきった顔をするイングリーネ。カルルはそれを覗き込んで笑った。
「なにそんな顔しとんの〜?まだまだこれからやって!一緒に考えればええやん!」
明るい笑顔が胸に刺さる。
懐かしくて優しい面影を振り払って言葉を放つ。
「うるせえ!そんなことは分かってる!…けど、バカみてぇにこんな所歩き回っててもダメだろうが。」
強く、そう言った。
こいつがライカじゃないことも、もう人間ではないことも、自分に言い聞かせるために。
人間のときのままの自分ではきっと同じ過ちを繰り返す。
いや、間違ってはいなかったんだ。正解だった、人生。
イカが救われた世界がどこにあるかも知らないが。
「せやなぁ…、ウチらよりこの世界について詳しい神探してみようよ。そしたらなんか浮かんでくるかもしれへんし!」
手を打って、彼女は明るく言い放つ。
まあ、無難な手だろう。その辺にいくらでも居るだろうし、誰でもいい。とりあえず知識を蓄えなければ話にならない。
「そうだな。とりあえず…あそこには誰か居るんだろうな。」
イングリーネの視線の先をカルルがみつめる。
城…というのが正しいか。この何もない世界に高く聳える建物。
「へえ…豪華やなあ、よく分からんけどさ。」
微妙にここからは遠い位置かもしれない。
「とりあえずあそこまで色んなところ見て周ろうぜ。情報収集しながらな。」
そう言うとイングリーネはカルルの許可も取らずに歩き出した。
急いで立ち上がった少女がその小さな体で彼の背を追いかける。
「うーん、ちょっとワクワクするな!イーくん?」
そういって隣まで駆けてくる少女を目だけで見ながらイングリーネは溜息をついた。
「何がだ。全然しねぇ…、なんで俺がこんなこと!」
こんな女とやらなきゃならないんだか…。
それを口にしたら、また何か言われそうな気がして。
あの笑顔を見せられそうな気がして、イングリーネは静かに口を閉じた。