ゴースト×ゴースト小説、はじめの一歩

始まりと言えば、さてなんだったか…。
運が悪いのかいいのか、俺の記憶は消えていない。
雷神になった今でも、妹の笑顔が忘れられなかった。
ほとんどの神が前世のことなど綺麗さっぱり忘れて今、平和に生きている。
自分がなんで、神になんてなったのか。生きていたって大して役に立たないのに。
世の中のゴミとしてその辺に落ちてるような奴だったのに。
どうするんだ、こんな何もないところで何をして生きていけばいいんだか見当もつかない。
「…分からないことだらけの世界って言うのは面白くも不安なものだなあ。」
これからどんな生き方をしようか。寝転びながら考える。
前世は少しだけ良い奴過ぎたんだ、悪い奴になってみようか。
良い奴は疲れるんだ。
二度目の人生まで他人の為に死にたくはない。

「ねえね、ちょっとこの辺って何があるか教えてくれへんかなあ?」
少しだけ頭を上に向ければ、反対側に顔が映る。
少女のようだ、彼女も幼い内に命を失ったというわけか。
「はあ?知る訳ねぇだろうが、俺だって来たばっかなんだよ。」
少しだけ柄の悪い少年を演じる。
でも演じなくたって永遠と言う時を生きれば汚れていくものなんだろうか。
「そっかあ、やっぱりな。何がなんだかよく分からんわ。」
苦笑いしながら、彼女は隣に座ってくる。
馴れ馴れしく、前から知っていたかのように、当然のように。
「…おい、馴れ馴れしい奴は嫌いだ。」
少しだけ体を起こしてそう訴えた。
嫌いなのは確かなのだ。前世で人口が少ない場所に暮らしていた為、馴れ馴れしく接しられるような人物が少なかった。
「ええやんええやん!仲良くなろうよ〜名前はなんていうん?ウチはカルル!」
ニコニコと、笑顔をこちらに寄せて楽しそうにしている。
げ、と声が漏れてしまって、体を引こうとしたがもう逃げることもできないだろう。
諦めて名乗ることにした。
「…イングリーネ。」
嫌々だと言う顔をしてぶっきらぼうにそう言っても、彼女は笑った。
少しだけ、妹と重ね合わせてしまって必死に振り払った。
「へえ!じゃあイーくん、やね!」
その言葉に耳を疑った。
「イ、イーくん?」
初めてだった、全てが。そんな風に名前でさえ呼んでもらえることが少なかったのに。
「嫌かなあ?」
カルルと名乗った少女が少し困った風に首をかしげる
それになんだか申し訳なくなってしまって。
「勝手にしろ、知らん。」
まさか、神より何倍も多い人間の頃よりも特殊な風に呼ばれるとは…。
あだ名、と言うものか。

少しだけ、楽しくなってきた。