ゴースト×ゴースト小説、漆黒の海と虹と。

走り続けた先、私の頭上に虹。黒い虹です。
ああ、レインは無事でしょうか。
「虹はレインの象徴…。それがこの状態ってことは…」
クールは虹を見上げながらそこで言葉を止めました。
私は不安になってクールの手を強く握ります。クールは安心させるように握り返してくれました。

…でも私もそろそろ限界なんです。息苦しい…。
やっぱり現実は恐ろしいと、思い知らされたようです。
波が荒れています。ミリア…レイン…、無事?大丈夫なの…?

目を閉じてみました。
すると、あれ?声が聞こえる気がしました。
−それじゃレインが!!
−大丈夫、ミリアちゃん。現実で会おうね…。

二人の声、海の方から?やっぱりミリアが飲まれた波からです。

「怖いけど、私は歩いていかなくちゃ。現実を認めていかなくちゃ。」
そうしなければ未来はない。ミリアに会う現実に帰るんです。
「リウ…?リウ!」
黒い海へと、私は走ります。

その中へ、きっと苦しいんです。海の中は、冷たくて暗くて…。
でも、ミリアもレインもそこに居るんです。
二人を助けられるのは私だけ。クールもそう言ったんです。

荒れる波に体が潰されそうです。自由は利くはずもありません。
でも、すぐそこに二人が…。
−レインが色をなくしちゃう!!!
ミリアの悲痛な叫び声です。海の中じゃないみたいに鮮明です。
(レイン…!)
思わず涙が溢れます。だって、レインのあの明るい虹のような色彩は失われていたんです。
彼が色を無くす。それって…どれだけのことなんでしょう。
「リウ!!」
ミリアに呼ばれてハッとしました。そうです、まだミリアが…。
「私の代わりにレインが…!!」
いえ、ミリアはとっくに助かっていました。レインがその色の代償に。
なんて辛いことなんでしょう、でも私達は、生きなきゃいけないです。色を無くした彼を助けるより先に。
「ミリア、逃げよう。海から出よう。」
話せることが唯一の救いです。まだ完璧な現実ではありませんから。
「でもレインが…!」
私はミリアの手を掴んで離しません、たとえその間にレインが沈んで行ったとしても。

「生きなきゃダメだよ!その命がなんのために救われたの!!レインが色を無くしてまで救った理由って何!?ミリアに生きてほしいからでしょ!!!」
現実が私達の帰るべき場所です。生まれ落ちた場所です。
…夢はいるべき場所ではないんです。
「リウ…。」
ミリアが涙を海に溶かしました。私も、涙を出しているのが分かります。
私達は頷きあいます。泣いてはいけない。そう、現実に帰るまではまだ、弱気になるわけにはいかないんです。

さあ、今水面へ。