ゴースト×ゴースト小説、あなただけのメロディー

クイーンはメロディーを知っているのかと思って彼女の横顔を見たけど知らない様子だった。
じゃあお互いに初対面なんだ。
「メロディー?どうして手を叩くの?」
クイーンはそうやって疑問を隠さず口にした。
私とは違うところだなあ…。
「手を叩くと幸せがいっぱい生まれるんだよ〜」
メロディーは満面の笑みでまた手を叩く。
ふーん、とクイーンが半信半疑で手を叩く。
私も釣られて手を叩いた。

メロディーはずっと楽しそうだけど、クイーンはあんまり楽しくないみたい。
「幸せなんてこんなんで生まれるわけないよ!メロディー嘘ついたの?」
唇を尖らせてクイーンは手を叩くのをやめた。
あれ?でもクイーンは笑ってるみたい。
「ホントに嘘かなあ?じゃあ、ちょっと現実のことを思い出してみようか」
私たちは3人で輪になって座った。
現実のことかあ…なんでそんな辛いことを?
お母さんが居なくなって、私は死んだ。
ゴーストに殺されたの。
それで私はここに来た。ここは天国なのかな?でも違う。
お母さんはもう居ない。現実に帰っても、お母さんはどこにも居ない。

涙が出そう。でも横を見ればそれはクイーンも一緒だった。
「メロディー酷い!!どうして私を泣かせるの!!ひどーいー!!!」
グーにした手を緑色の草原に叩きつけて泣いている。
クイーンにも辛い記憶があるみたい…。
「待ってね、クイーンちゃん。グーじゃダメだよ、パーにして?」
そういうとメロディーはツインテールを揺らして手を叩き始める。
「リウちゃんも一緒に叩いてみよう?」
手に上手く力が入らないけど、とにかく一回二回…叩いてみる。
「どんな辛いことがあったの?」
叩きながら、瞳を閉じながら、耳を澄ましながら、メロディーは言った。
そうするとクイーンは少しリズムを崩しながらも必死に手を叩きながら静かに言う。
「歩けない、私もう二度と歩けない…」
ボロボロ泣きながらクイーンが言うから、辛くなった。
でもメロディーは、
「リウちゃんは?」
なんて聞くから手拍子の音を聞きながらゆっくり言った。
「お母さんには、もう会えない…」
それでもメロディーは優しく笑う。手を叩きながら優しく笑う。
「そっか、とっても辛いね、痛いね。心がズキズキしちゃうね。」
「でも大丈夫。今はクイーンちゃんもリウちゃんも、一緒だよね?一緒に手を叩けてるよね!一人じゃないよね!だって音がするから!」
そういうとメロディーは立ち上がってスキップする。
私はそれをぼんやり眺める。

「お花さん!こんにちは!」
そう言ってメロディーが手を叩けば、花はそれに反応するように揺れ動く。
「太陽さんも〜!」
手拍子パン、パン、パン。
太陽が雲からゆっくり顔を出す。
「すごーい!メロディーどうやるの!?」
クイーンは涙を振り払ってメロディーに駆け寄る。私も釣られて歩いてみる。
「手を叩くだけ!クイーンちゃんにも、リウちゃんにだってできるよ?」
クイーンが手を叩けば鳥が鳴く。
私が手を叩いてみれば花びらが綺麗に舞う。
すごい。素敵なことがいっぱいだね。

「すごいね!リウ!!」
「うん!そうだね、クイーン」
手を叩いて走ったり、笑ったり、驚いたり、抱き合ったり…。

「よかった。もう大丈夫だよね。手を叩いてみよう、あなたの未来は…輝いてるよ!」
指輪に輝く青い宝石がキラリ…

振り返ればメロディーはもう、どこにも居なかった。