ゴースト×ゴースト小説、私たちは希望を知らない

「リウはどこから来たの?」
クイーンはまっすぐ前を見て私にそう言う。
「どこからってどういう意味?」
私だってこの世界のことはよく知らないし、どうなってるのか分からない。
国とかそういうのって、そもそも存在するの?

「ふーん、現実から来たんでしょ、リウだってどうせ。」
私を見ないままあっさりとクイーンは言った。
ズキリ、私の胸にその言葉が刺さる。
「…なんで?」
どうして知ってる?この世界の住民にはみんな分かってしまうの?
レインもスマイルも知ってたようだったけれど…。

「へへ、だってクイーンもだもんねー!現実にはもう帰らないって決めたけど!」
驚いた。ドリームって名前だからてっきりこっちの世界に元々居るのかと思ってたけど違うみたい。
でもどうして?
「現実はつまんない。なんにも思い通りにならないし、…ここに居た方が私は幸せ。」
その横顔はただのか弱い少女の姿。
でもその気持ちは私にだって十分分かる。だって私もこの世界に逃げ出した…。
「…そうだね、私も…そう思う…。」
だって怖い。現実は嫌なことしかない。嫌なことしか起こらない。
だったらずっと楽しいここにいたい。もう帰りたくない!
「そうだよね!ずっとここに居たい!!レインとリウと一緒に、ここに居る!」
クイーンはまた楽しそうに笑う。
でもそれは現実から逃げているだけ。

現実が怖いから、夢で笑うんだ。
現実で涙を流すから、夢で笑うんだ。
現実で痛い思いをするから、夢で笑うんだ。

ここに居ればきっと、一生苦しむことはないんだと思う。
でもそれはいけないことな気がする。

私は…いや、私とクイーンはずっとここに居て良いの?

帰る方法も知らないけど、夢から覚めるにはどうすればいい?
頬をつねる?でもそれをする勇気は私にはない。
夢から覚めてしまえば、私は希望を失ってしまう…。

『いつでもスマイル』だけじゃ…まだまだ足りない。
私が勇気を持つには、まだ足りない。

ここから離れたくなるには、まだまだ全然足りないの。

「手を叩いてみよう!あなたの未来は輝いてるよ!」
そんな声がして、前を見つめた。
そこには青い髪を二つに結った少しお姉さん…というイメージの少女。

「私はドリーム・メロディー!みんなを幸せにするよ♪」
そう言ってあなたは手を叩いた。