ゴースト×ゴースト小説、君へスマイル

私はレインに手を引かれながら光り輝く世界を歩いた。
時に質問を投げかけ、それを返してもらい、私は少しずつ笑顔を浮かべることもできるようになったし、一歩一歩前に進む勇気も持てた。

「やあ!こんにちは!」
そうやって、道端から手を振る少年の姿を見た。
「僕はドリーム・スマイル!君に笑顔を届けるよ!」
背丈は私と同じくらい、綺麗な紫の髪を揺らす元気な子だった。
「リウちゃんだね?レインから聞いてるよ、とっても可愛い子だね!」
純粋で真っ白な笑顔には私も元気を貰った。
「ありがとう、あなたを見ているだけでも笑顔になれるわ。」

この世界はとっても楽しい。きっといつか帰らなければいけないけど…。
「良かったねリウちゃん、少しスマイルとお話しておいでよ。僕はちょっとあの虹の向こう側に行ってくるね?」
すぐに帰ってくる、と行ってレインは緑の草原の上を走っていった。
私はスマイルと二人、花が咲く美しい場所に残された。
初対面の人は苦手だ。でもスマイルもレインと同じように不思議と話すことができた。

「ねえスマイルはずっとこの世界にいるの?」
レインはこの世界で生まれて、この世界でずっと住んでるみたいだったけれど…、時々そうではない人がいるみたいで。
私のように突然来る人もいるみたい。
「うーん…違うよ。置いてかれちゃったんだよね、現実の僕に。」
…現実に、置いていかれる?
「そんなことがあるの?」
じゃあきっと私も、現実は夢の私と別方向に歩き出してしまう…。
「いやあ、リウちゃんは大丈夫だと思うな。普通は置いていかれたりしないよ。」
彼の独特なゆったりとのんびりな話し方には無条件に落ち着いてしまう。
「だって僕は置いていかれちゃった感情の一部。現実の僕は体を作り変えちゃったんだけどね?その時に抜け落ちたのが僕、スマイルなんだよ。」
そう言ってお得意の笑顔を見せられた。でも彼は悲しそうな顔をして。
「僕には居場所があるからいいんだ。この世界でスマイルって名前を持って生きていける、でも現実の僕は…笑顔をなくした。僕が居ないから。」
…笑顔を、なくす?
それにはどんな意味があるんだろう。
それは哀しいこと、きっと。辛いことなんだ。
その人は生きていける?
「…どうして?なんで笑顔を置いて行っちゃったの?他に置いていくものならあったはずなのに…」
涙を置いていけばよかった。悲しみを置いていけばよかった。それなのに…
「一度深い絶望を感じて、立ち上がれなくなちゃってね。体を作り変えることを決めたんだよ、全てを作り変えられるように…。でも忘れ切れなかった。それが笑顔を取り戻せなくなった原因だね。楽しいとか嬉しいとかは、絶望に覆い隠されちゃったから…。」
絶望に、覆い隠された?
じゃあ私もいつか…。

ああ、思い出したくない。現実はいや、良いことないもの。
私も絶望した。けれどこれを思い出せば私は…。
「…私も、そうなっちゃう。現実はいや!もう見たくない!!私ずっとここにいる!目を覚ましたくない…」

私の世界に、雨が降る。
音を立てて降り続く、絶望の雨。
冷たいけれど、ここに居られるならそれでもいい。
雨はいつか止むもの。晴れを待てば良いの。

「…現実は綺麗なんだよ、リウちゃん。」

なのにスマイルは、そう笑った。
「君が思うほど、汚くないから。」

彼は空いっぱいに手を広げて笑った。

…そしたら、夢の世界は景色を変えた。