ゴースト×ゴースト小説、神々の封印

「ねえちょっとファル、あの人間に何したの?」
今日も金髪は楽しそうに僕の元へとやってきた。
…だが今日は来客がもう一人。
「ファル!見損なったわ…あんな酷いこと!!」
怒りに顔を赤く染めてやってくる小柄な少女。
それに金髪は振り返ってまた笑う。
「カルルか、なんだ久しいね。あれ、昨日会ったっけ?ん?あれは百年くらい前の話だっけ…」
とかなんとかマイペースにぶつぶつと追憶する。
彼曰く、時を越えると記憶が混ざってしまうらしい。
少女はそんな時空神の性格を理解しているため敢えてなにも言わず、怒りをそのままに続けた。
「なんで?なんで彼に、フロウに欲望だけを残したん…?彼は苦しむ!ずっとあの力と、ファルが封印した記憶に…」
そう、彼の記憶は封じた。
『僕のところに辿り着けば力を制御してあげる』
その記憶を封じた。わざわざ僕の力で。
「分かるでしょ?カルルならさ。僕は無差別に人間が嫌い。」
そう、嫌いだ。
「でもそれは…」
大嫌いなんだ。全てを奪った人間共が。
「でもじゃないよ。今鎖に繋がれてるのだって、セラが眠り続けるのだって、…ウォリスと引き離された原因だって、全部人間のせいだ。苦しみ続ければいいんだよ、人間なんてさあ…。だって全部元は人間が悪いんだもーん!」
カルルは僕を「見損なった」と、そういった。
いいさ、どうとでも言ってくれて。
ここにいる限り、僕にはもう復讐しかない。
「歪んだな、ファル…、ウチはずっと、信じてたのに。」
そういって彼女は踵を返した。
…あーあ、嫌われちゃったね。

「いいのー?ファル、彼女は優しい子だよ。敵にまわしちゃ不利。」
また金髪がそうやってうるさく言う。
「いいよ、関係ないでしょ。そう言うお前はどっちの味方?」
なんとなく、そう彼に問う。意味は特にないけど。
「僕は僕の味方だよ。だって時間旅行できたらなんだって有利になっちゃう。」
金髪は笑う。彼は時の全てを知っている。
これから起こる未来の出来事を何パターンか知っている。
だから、笑うのだ。
「…やっぱりお前は苦手だな、デヴィーセ。」
どことなく、こいつが怖い。
こいつは知り尽くしているから、恐れる。
「褒め言葉だね。それが僕の義務だから。」
また笑う。その整った顔立ちで笑う。

「じゃあカルルにもう一回会ってくるよ。僕ちょっとさっきの話気に入らないんだよね。」
少し驚いた。
さっきの話は僕とカルルが単純に口喧嘩しただけなのに。
デヴィーセは他人に興味がないし。
…気に入らないなんて。
「珍しいね…そんなこというなんて。」
歩いていく彼を目で追いながらそう言ったら、
「だって、カルルは本当に義務に従順になちゃって人間の味方してるってことでしょ?それ、僕達とはもう組まないってことになる。」
後姿を見せたまま返された。
「彼女は…僕達とつるむことより義務を果たして犠牲になったみんなを救うことを選んだってことなのか、確かめたいだけさ。」
少しだけ寂しそうな、でも面白がるようなデヴィーセを見てやっぱり彼が何を考えてるのかよく分からなかった。