ゴースト×ゴースト小説、求める為の記憶
世界が揺れて見えた。霞んで見えた。
一体何がどうなってしまったんだろう。
全身が痛くて、どうしてか涙が止まらなかった。
体を少し動かそうと力を入れてみても、痛みが増すだけだった。
そして、すぐに分かった。
これはあの力のせいだと。
力が強大すぎて体が耐えられていないのだと。
やっぱり俺はダメだな、他人を守るどころか自分さえ守れちゃいない。
叫びを上げることも出来ない自分を情けなく思いながらその目を閉じた。
もう諦めた、その時。
「な、に……?」
急に力が収まって、痛みだけがそこに残る。
呼吸がまだ上手く出来ず、その体を起こすことでも一苦労だった。
そして、ぼやける視界で見えた、黒いモノ。
−いやー!凄い!見事だよフロウ!!
自分の周りをくるくると回りながら浮遊するその人物をなんとなく見ていた。
−僕の力、君は使うことが出来た。ちょっと体は危険ではあるけど、まあ大丈夫だよ。
どこが大丈夫なのか、そんな風に思いながらそいつの話を聞いていた。
その姿を追うこともないまま。
「…こんな力じゃ…誰かを守るなんて出来ない……」
涙の溢れる瞳を黒いそいつに見せまいと、俯きながら静かにそう言った。
が、そいつは、
−別に守らなくたっていいじゃない、ねえ?守るものもすべて壊してしまえばさ。
今まで壊れてしまったものなんて沢山ある。
「嫌だ……そんなことはもうしたくない……」
俺のせいで、生きる希望を失ってしまった奴だっている。
−じゃあ僕の力はもう要らないの?
守るために手に入れた力。
「違う、自分で制御できるようになりたいだけ……」
我ながら我儘だな…。
でも、泣き虫で弱虫だと笑われても守りたいと思った者達の為に…。
−……そう、じゃあいずれ僕の所においで。残念ながら今の僕は実体じゃないからねー。
−君の力を少し弱めてあげよう、その為の道具をあげる。
フロウの瞳をじっと見つめてにやりと笑った。
何故か怖くなってまた涙が溢れてしまう。
−ほら、これよく見ておきなよ。綺麗でしょう?まるで宝石みたいに。これが君の力を制御できるモノ。これを持てばきっと今よりずっと楽に力が使える。あげるよ。
それは紅くて、紅い、輝くような宝石に見えた。
邪神は笑う。それでも笑う。
−…まあ、僕の所に来れたら、の話だけどね。
怪しく紅が光ったと思うと、どうしようもなく苦しい気分になり、そして黒い何かも消えてしまった。
その瞬間に、涙も止まってしまった。