ゴースト×ゴースト小説、俺たちの願い

少年から少女へ、力が受け渡される瞬間を、ただ見ていた。
止めることも無く、呆然と。
−アルネス!貴様止めないのか!
頭に響く、声。

「止めない。」
ただ、一言。
−ふざけるな!!危険なんだぞ!!
ふざけるな?こっちは大真面目だ。

「あいつが決めた事なんだろ?俺に止める権利はないよ。」
雷神様の唸る声が聞こえる。
けれど、俺は神様には従わない。
だって何一つ、俺にしてくれた事なんて無かっただろ?
神様は、昔っから俺が嫌いだったんだろ?

「それに、そんなこというなら……」

「フロウじゃなくて、俺を運命から守ってくれたら良かったじゃないか。」

大嫌いな神様に何度もした願掛けを、
大好きな母親を追った後ろ姿を、

雷神様は、きっと見ていないだろ?

−アルネス……
なんだよ、まだ俺にいいたいことがあるのか。

少年は次の言葉をじっと待った。

−俺だって、お前を見捨てていたわけじゃない。

−俺はこれを告げる事も、本当は罪深いことだがいってやる。

脳内に、そっと溶けた言葉。
俺が、ずっと聞きたかった話。

−神はいつだって、世界の味方。だからお前一人を守る事なんて、無理だ。

−だが今回邪神は運命に抗った。自分の欲望のためにな。それを、お前に止めてほしかっただけだ。

−悪かったな、アルネス。

そういって、雷神様の声は聞こえなくなってしまった。
だけどどうして、どうして……

こんなにも胸が暖かいんだろうか……。

「…雷神様…、雷神様…!!」
もうここには居ないだろう、潔く消えてしまったみたいで。
…カッコいい奴だなあ、人の気持ちも聞かないで。

「ずっと勘違いしてた。神様がみんな悪い奴だと思ってたんだ、俺は邪神みたいな神様しか見てなかったんだな。」
目の前に広がる景色は、フロウのことは、よく見えなかったけど、風の音がよく聞こえた。

「…でもまだ信じられない。人間だって大半は悪い奴なんだ。神様だってきっとそうだろ?だから雷神様、あなたしか信じない。今度何かあったらイングリーネの言うことしか聞かないからな!」

今日は笑えた。
目の前で人が不幸になったのかもしれないけど、俺の気持ちは晴れていた。

フロウ、お前はもしかしたら大変な奴に目をつけられたのかもしれないけど頑張れよ。
俺、ずっと見てるさ。

…俺が思いを託した奴だからな。