ゴースト×ゴースト小説、神々の手駒

「案外ヒトを神に仕立てるのって大変なんだね。」
その真っ暗な空間に金髪碧眼の少年と、鎖に捕われた少年が顔を合わせる。
「別に神にしろとは言ってないじゃん。此処に連れてくるだけなんだから…」
ため息混じりにそう呟く瞳の紅い、邪神。
「そうだけど、そうする為に僕なりの考えがあるのさ。」
動けない少年の前で、金髪を上機嫌に揺らして歩き回る少年。
紅目の少年はいつしか恨みさえ覚えていた。
「あ、そう。」
そう言うとそいつは笑って
「折角僕が運命を変えるために彼とわざわざ接触してあげたんだから感謝してよ」
偉そうに言う。
正直、いつも暇な僕のところに早くそのヒトを連れて来てほしいだけ。

どうせまた碌でもない手駒なら、殺しても苦しませても問題ないし。
早く玩具がほしいだけだ。
「ねえちょっと無駄話いいかい?」
青い目を楽しそうに歪ませて人差し指を立てた。
「なにさ、面白いの?」
期待はしている。
だって彼は時を越えている。
無駄話といっても、いつもかなり真実味のある面白さがあった。
「この前いってたイングリーネの妹の話。」
イングリーネの妹。
まあイングリーネは僕達の仲間、雷神だ。
彼が人間だった頃の話、妹がいたという事をデヴィーセがウォリスから聞いたらしい。
それについて調べてみれば、その話は今いる僕達の時代、つまり現代の話だそうだ。
イングリーネが神になったために、人間としての彼の存在は消えているが、ある島にいるある少女がイングリーネの妹である事は確定的らしい。

「その妹、子供がいるらしいよ。この世界のどこかにね。」
ふーん、僕の反応はその程度だが、なんとなく気になる気もした。
「でも名前は知らないや。」
その言葉に咄嗟に反応した。
「そのイングリーネの妹の名前ってなんだっけ?」
姓が分かればなんとなく心当たりがあったりして。
全然人間の事は知らないけど。

「えーと…確か……」

「ライカ・フェルダ…だっけ?」

……ふーん、やっぱり…知らないや。