ゴースト×ゴースト小説、不思議な話。

足音が、聞こえた。
「……?」
大した音でもなかったのに、無意識に感じた良く分からない違和感のせいで直に気づいた。

その足音の主の方へ俺もセリエルも顔を向けると
そいつは笑った。

「初めまして、ここに居たんだね。」
人懐っこい笑顔を見せる。
金髪の少年は此方に来た。
「お嬢さん、さっきのは随分と大胆だったね。勇気があって尊敬するよ。」
さっきのって…
あの、抱きつかれたときのこと?
見てた……?まさか……
「見てたのかっ?」
焦りが隠せずそう尋ねた。
「うん、なかなか良かったよ。」
罪悪感のない、さっぱりとした笑顔だった。

もうこのまま死んでしまいたい。
こんなに恥ずかしい事ってあるか?
まあ町中だし見られても納得できるけど……

そう素直に感想を述べられるとなぁ……。
「……死にたい。」
俺は本当に掠れた声で呟いた。
だがその金髪の少年には聞こえていたようで彼はにっこり笑った。
「その感想だけを伝えに来たんだ、じゃあまたね。」

…マジか…。
本当に悪意しかない行為だ。
名も名乗らずに立ち去っていく彼を見ていた。
曲がり角で彼が歩みを止めたと思うとどういうことか、彼は完全に消えた。
視界から消えたわけじゃない。
姿を消した。

(どういうことだ……)

運命が、狂い始めて、
「あれれ…ここどこや…?」
さっきの少年と入れ替わったようにまた可笑しな少女がやってきた。
フロウとセリエルは不思議がるように顔を見合わせる。
「あ。」
気付かれた。
そして少女は焦るような顔をして此方へ走ってくる。

「あ、あんた等フロウとセリエルか?」
小柄な少女はオレンジの瞳を大きく開き驚く。

驚くのはこっちだが…。
「はい、そうですけど……」
セリエルがそう応える。
と、少女は益々焦り足踏みまでし始めた。
「じゃああのー…金髪のー…青目のー……頭可笑しい奴見かけんかった!?」
さっきの奴か。
さっきの奴ですね。

「それっぽい奴は……」
見たと思う。
頭可笑しいでピンと来た。

「やっぱり!!あんまり関わっちゃいかんよ?自分の心を強く持って!嫌だと思ったことははっきり断るんだよ!?それと…」
妙にハイテンションなその女は無駄に焦って俺に何かを訴え始めた。
なんだかよく分からず聞き流すしかない。
「いきなりなんだよ!!ちょっと待て!よく分からん!!」
いや、本気でわかんねぇから……。
いきなり何かの物語の台詞のように並べられた言葉に困惑するしかなかった。
彼女は不安そうな顔をする。
「ご、ごめん…でもウチはこれ以上の事はいえへん…。」
俯いて黙り込んだ。

セリエルもフロウもただ呆然とそれを見ていた。
そしてそれに耐え切れなくなったようにオレンジの瞳を持つ少女は何もいわずに走り去った。
「なんだったんでしょう……」

運命が完全に狂った。