ゴースト×ゴースト小説、ずっと一緒に。

「それで、本題です!」
俺に向き直って人差し指を立てる。
なんだよ、本題なんて。
無駄に大事な事のようにセリエルは真っ直ぐに瞳を見つめる。

「私の目的はいろんな町に行く事ですけど……」

「フロウ様の目的ってなんですか?」

ああ、そんなことか。
まあでもそうだろう、いきなり泣きながら家を飛び出してそれを見かけたら変な奴だなーと思うだろうと思う。
目的、か。
「他人を守れる力を手に入れること、かな。」
無意識に言葉が出た。
もう誰も失いたくない、それだけは確かな事だ。

「じゃあ…強くならなきゃですね。」
なんて、即答で。
「私、協力します!」
手を取って、ニッコリと笑う。

「でも…」
危ない目とか遭わせたら責任取れないし、それに自分勝手な俺になんか振り回されたら一溜まりもないし……
「だーいじょうぶです!!」
少し怒った顔を見せてから直に笑う。
喜怒哀楽がはっきりしすぎて、コロコロと表情の変わる少女をみると、なんだかこっちまで元気になる。
「じゃあ約束します!」
「え?」

思わず首を傾げた。
それでも彼女はまっすぐに前を向いて、

「例えどんなコトがあっても、ずっと一緒にいます。」

どんな言葉よりも真剣に言い放った。
だけどすぐに顔を赤くして抱きしめてきた。

「だからフロウ様も私と一緒にいて下さいね〜!!」

それは嬉しい。
でも…何度も言うけど……

「恥ずかしいから!!」

太陽が笑って、俺はそれでも今が楽しい…―

でも魂が抜けそうになるほど恥ずかしかった…。
「いいか!町中でいきなり抱き着くな!!」
顔が熱くなるのを感じるほど、俺の顔は赤い。
焦って、せっかく盗んだ果物も落としそうだ。

「え〜いいじゃないですかー。私達は今愛を誓い合ったばかりなんですよー?」
路地裏に引きずり込んで大声を出され困惑するセリエルだが、その頭はいつでもフロウのことを考えているようだった。

「誓ってねぇよ!!少なくとも愛は!!」
此処は否定しなければマズイだろう、色々と。
「私はずっと好きだったのになぁ…」
急に敬語じゃなくなって、俯いた。
だが『ずっと』の意味が分からない。
会ったこともないと思ったが………。
「は?その意味がわかんねぇんだけど……」
特に深い意味は無いと信じたい。
こんな女と、前にも……?

「フロウ様は決していい人ではありませんでした!!」

……フッ。
なんだ、結局こいつは変わり者だから、俺が悪い奴だというところを好きになったのか。
なんだそうか、盗人の俺が好きになったってことか。
だが、ただ瞬きを繰り返す俺の手を、セリエルが掴んだ。
「町がゴーストに襲われたとき、私を助けようとしてくれたんですよね。」

ゴーストに襲われた時か……。
たしか燃えた家に残っていた人がいたから声をかけたんだ。
で…確か出てきた女は「みんなに声をかけてくる」とか言って戻っていったが結局死んで……
じゃあ、その女が、こいつ?

「ああ……」
ぼんやり浮かぶ彼女との記憶。
その一瞬で俺のことを……

「マジか……」
でもあの時は確か銀髪だったような…
気のせいか?

「あれはまさしく、運命の出会いだったと言う事ですよフロウ様!!」
運命、運命、運命…かぁ……。

本当に運命なら、これは神の悪戯かなあ…。
ならいいな、まだ神に見放されてないんだ。
ちょっと、幸せ、かな。

そう微笑んだ時、
その瞬間が、揺れた。