ゴースト×ゴースト小説、もう一度。

「お腹空きましたあ……」
後ろから聞こえてくる声に気が抜ける。
だが、否定もできない。
確かに腹は減った。
歩きっぱなしだった訳だし無理もない。
でも……
「金なんてねぇぞ……」

小遣いなどすがったことも無かった。
だから電車も使わず歩いてきたのだ。
まあ、一銭も持たずに遠出しようという方のが無茶なのだが。
「お前金は?」
振り返りながら尋ねる。
この返答に運命を懸ける……が、
「持ってませんよ!フロウさんと会ったの、お散歩の途中だった訳ですし…」
ああ、こいつも無茶な奴なんだった。
行き詰ったぞ……。
今更帰る訳にも行かん、だが飢え死ぬ訳にもな………。

だったら盗むか?
自宅からは離れたし多少の犯罪は出来ないことはない。
実っているものを探すのも大都市では面倒だ。
(また盗むのか…?)
持って生まれた力というものはある。
ただなー……

髪飾りに触れた。
記憶が溢れる、思い出したくも無い記憶が。
だが生きる為だ。
(今回限り許してくれっ)

「セリエル!」

「はい?」

「お前は此処で待ってろよ、動くなよ、絶対だぞ!」

「は、はい!」

無駄に用心深く注意をして走り出す。
結んだ髪を解くと腰の辺りまで伸び、風になびく。
多少視力が衰えたために一応買っておいた滅多に使わない眼鏡を装着。

バレた時のために外見は変えておく。
女だと思われても無理は無いだろう、しかしその方が好都合である。

視やすくなった視界に、食材の山が見えた。