ゴースト×ゴースト小説、キミヲ取リ戻ス

「久しぶり、お兄さん。」
正義面して戦い続けるエレスを見るうちに、普段話しかける事のない僕だけど、ちょっと声をかけてみようと思った。
「お前は……」
きっと彼は僕を覚えている。
いい人に見えるもの、一度会った人は忘れなさそうな。
「僕はリール。きっとこの体で会うのは初めてだネ。」
気味の悪いガラス玉の目に、大人に見えるだけの作られた体。
実際大人なんてちょっとも楽しくなくて、正義を名乗るだけの者に、悪い行いはすべて止められてしまう。
エレスだって、その正義の一人なんだ。

「…そうだな。で、何か用か?」
相変わらずの無愛想な態度。
そんなお兄さんにつくられた記憶のせいで、僕はこんな体になったのに。
…機械になる道を選んだのに。

「…僕はお兄さんを許してなんかない。僕が犯罪に手を染めてしまったのはお兄さんのせいだった!僕は何も悪くなかったのに……何も…何も……。」
あまり感情的になると壊れてしまう体を気にして、怒りをぶつけた。
この目の前にいる人間のせいで、レイヤも消えた。もう何もない。

そう、すべてお兄さんのせい。僕は悪くない。

「そうか。俺は許してもらった気になんて、なってないけどな。」

あっけない反応。つまらない、反応。

「……そっか。それならイイヤ。そのまま罪を背負って生きて行ってくれる?その代償に僕のいうコト、聞いてくれる?」
そうしてくれなきゃ、許せないもん。
「……ああ。」
彼はそれを素直に聞き入れた。
喜びが止まらない。僕は笑った。嬉しくて、嬉しくて。

「レイヤを復元して。」

「僕の身体を犠牲にしても良いカラ、とにかくレイヤを返して。」

僕に出来なかった、レイヤを取り戻すコト。
情けなくて、申し訳なくて、孤独に溺れたケド……

「お兄さんナラ、出来るよネ?」

お兄さんに頼めば大丈夫。だって頭がいいもん。

「……聞き入れよう。」

嬉しくて、ナミダが流れた……。