ゴースト×ゴースト小説、ウイルス018

リールは平凡な日常に戻った。
ただ、完全に塞ぎ込んでしまって、生きるのも楽しくないと言い張った。
俺には何も出来ず、ただ見守る。

「やり直せないかなぁ、もう一度。」

リールがいきなり呟いた。
俺に語りかけるように、そう言う。

「人生って…後戻り出来ないね。」

涙なんて流して、そう言う。
しかしその言葉を最後に、また喋らなくなってしまった。

やり直す……、それを可能にしたら、リールは幸せになれるのか?
天才的な頭脳をもってるあの父親なら、やり直すことくらい可能じゃないか……?

……やってやる。

山積みの機械に移り、また移りと父親の部屋へと向かう。
もの凄い数の電子機器に移ろうとすると、体が焼けつくような痛みに襲われる。

セキュリティだ。
ああ、相手は世界中から人気の天才科学者だった。
「負けるかっ………!」
諦めるのは嫌だ。
リールには少しでも笑っていてほしい。
俺を認めてくれた、唯一の人間なんだから。
ただひたすらウイルスとして、セキュリティを壊していく。
ウイルスは気付かれない。
何か問題を起こさなければ。

エラー発生。
これでやっと気付いてもらえる。
そんな、厄介な存在。

「おい親父さんよぉ……」
ディスプレイに近付いた。
驚いた顔をされる。まあ無理も無い。

「いいのかよ、息子をあんなに苦しませて。」

「お前には、俺が何をいいてぇか分かるだろ。」

「お前みたいな天才には出来るはずだ。」

「人生を、創ることくらい。」

告げた、言葉。
たとえリールの人生を壊してしまっても、それ以上のリールの幸せを望む。
俺は何でもしよう、リールが笑ってくれるなら。

また、俺が必要と言ってくれるなら。

「ウイルスの言葉なんて聞かねぇかもしれねぇけど…」

「俺からは、頼んだから。」

黒い影が姿を消した。