ゴースト×ゴースト小説、感情消失。
薄暗い部屋へ足を踏み入れる。
体中縛り付けられたエレスの姿、もう見つめてもなんとも思わなかった。
握り締めるナイフには目も向けず、ただ呆然とエレスを見る。
その内に、次々記憶が溢れて来る。
本当に短い間だった。
でも大切だったの、僕には人と触れ合う時間が。
こぼれた涙の雫が地へ落ちる。
戸惑ってる僕に、初めてお兄さんが笑った。
「殺せばいいさ。」
優しい笑顔に、感情が溢れ出す。
「自分が生きる為なら、他人の命くらい捨ててやれ。」
「この世界ではな……。」
時間が巻き戻ってくれたら、どれだけ幸せなんだろう。
お兄さんと僕が、出会わなければ。
「殺す……殺すよ……!!」
ナイフを振り上げて目を閉じてさ。
思いっきり、突き刺してさ。
お兄さん、殺してさ。
泣きわめいたんだ。馬鹿みたい。
結局死んだ大人にまでしがみついて。
レイヤの狂った笑い声が聞こえる。
でも、僕も完全に可笑しくなった。
感情が消え失せていく。
楽しさがいつしか苦しみに変わっていくのになんて気付かずに、感情に飢えた。
もうぜーんぶ忘れちゃった。
…………楽しくないや。