ゴースト×ゴースト小説、ウイルス感染。
母さんが僕の将来を想像して描いた、最期の絵。
あのヘッドフォンは母さんが音楽を聴くときに愛用してたモノらしくて。
きっと髪型とかも、父さんが母さんの理想に近付くようにしてたんだ。
気付いてあげられてよかった……。
そう考えてた時、檻が開いて。
怖い大人達が居た。
お兄さんを連れて行くの。
「待ってよ!」
僕が発したその言葉に大人達が一斉に振り向く。
怖くなってそれ以上言葉が出ないけど、お兄さんと離れるのはもっと嫌だ。
しかし、お前も来いなんて手を引かれる。
どうなっちゃうんだろう……レイヤ、助けてよ。
暗い部屋の一室に放り込まれて。
でもお兄さんは動じなくて。僕だけ大人に手を引かれて。
レイヤ……どうすればいいの?
手渡されたナイフに恐ろしさを覚えて。
エレスを……殺せ、と。
「は……?」
状況が、理解出来ず。
エレスとはお兄さんの名前……?
「殺せよ。」
レイヤが、小さく囁いた。
嫌だった。レイヤ、嘘なんでしょ。
言ってないよね?何も……………。
「うぜぇんだよ、あいつが何だよ。」
脳内に響く声は冷たく、恐ろしかった。
「お前が逃げられんならそれでいいだろ。」
矢に射抜かれるように心が痛む。
ズキズキと、軋むように繰り返す痛み。
「馬鹿みたいに大人にしがみつくなよ。」
ヘッドフォンなんて投げ捨ててしまいたかった。
ぐるぐると響く音に惑わされては自分の愚かさに気付いていくようで。
何をすれば正解?
誰かに問い掛けた、それに答えるような、声。
「殺せよ。」
その言葉が、僕のまともな思考を奪った。