ゴースト×ゴースト小説、憎しみデータ
何でだ、何で逃げない?
何でこんな大人一人と一緒に居ようとする?
リールの思考にこっちが呑み込まれそうだ、感情の溢れた二人の心は俺とは違う。
俺は自我を持ってるなんて言わない。
ただのウイルス、そう信じて来た。
でも違う。
周りのウイルスやプログラムは喋らない、心が無い、何も無い……。
俺が違うの?俺が何か間違ってるの?
なんだよ、何なんだよっ!
自我をもってて悪いか、自我をもってて可笑しいか、感情をもってていけないか。
嬉しさがなんだ、楽しさがなんだ、俺は感じない。
あるのは恨みだけだ、妬みだけだ。
「リール……。憎い、感情なんて……」
「無くなっちまえ…………」
音量を下げて、そんなことを呟いて。
きっと、こんなことがしたかったんじゃない。
なのに……心の底から湧き上がってくる怒りが抑えられずに。
でも今から何かしようと言っても何も出来ない。
今は待とう、今は少しだけ。
きっと何をしたって、リールのことは嫌いになれないなんて分かってた。
ウイルスにだって、愛せることはある。
それが俺だけだって。
闇に染まったデータが目覚めない。
きっと今このデータが変わったなら、俺はリールを傷つけなくて済んだ。
ゴメン……。