ゴースト×ゴースト小説、暗闇の感情

俺が生み出したウイルスがセキュリティを破っていく。
パスワードも何とかすれば見つけられる。
リールも暇してるだろうしさっさと終わらせたいところだが。

「早くしてくれよ、面倒くせぇなぁ……」
正直、あんな組織に捕まる子供達の方が悪い。
少なくとも俺はそう思ってる。
ただ俺も悪い。リールを外に出した俺も十分悪い。

だが俺もウイルス、人に危害を加えられればなんでもいい。
そんなはずだったのに。

遊びに明け暮れる毎日だった、下手してリールなんかのとこに来ちまったけど。
まぁなんだかんだで俺はこの世界で一番強力で優秀なウイルス。
こんなクズ共がつくったセキュリティなんかにてこずらねぇってことだ。

「さあ行くぞ。」

一人一人のデータ。
其処には青の青年のデータもあった。
「エレス……ハンターの裏切り者……?」
かなり強力な力の持ち主だそうだが子供を守る為に此処に来たそうだ。
「良い奴だなー。俺には無いような感情が溢れてる。」
俺の能力は心を繋げる事。
ただ俺はウイルスだ、どんな感情を見ても感じても、自分が不意に感じる事は出来ない。
そんな事が出来たなら、俺はエラーを起こしてしまうだろう。

「くだらねぇんだよ……何が嬉しさだ楽しさだ……」
涙も流せぬプログラムの身、ヒトとの馴れ合いもこれで終わりにするつもりだ。
データの山を怒りと共に壊していく。
破片は細かくなって散っていく。

「何処だ…開錠するためのプログラムは何処だ!!」
青白い光に満ちた空間は居心地が良い。
あんな狭いヘッドフォンの中よりもずっと。
ただ今はそんなこと言ってられない、早く見つけるんだ、プログラムの在処を。

「あった……!」
青白い光を無数に放つモノ。
あれだろう、だが俺のようなちっぽけなウイルスで敵うか?
気付けば周りのウイルスたちも消えている。こいつには敵わなかったのだろう。

ただ俺だって伊達にウイルスやってないぜ?
プログラムを潰す方法くらい身につけてやがんだ。

静かに手を向ける、集中し目を閉じる。
「行くぜ……」
ゆっくりと手を握っていく。
力を込めて握ってゆく、まるで手の内に何かがあるように。
「さあ……錠を開け……」
握り締めて、その感覚を焼き付けて。

最後まで握り潰した瞬間、何かが砕ける音がした。
瞳を開ければプログラムは思いっきり破損していた。

落ちていく破片を口に運ぶ。
「まぁまぁうまいかな。」
何だか上機嫌になった。