ゴースト×ゴースト小説、世界恋愛談

「で、お前は本気で外に出てぇと。」
画面に顔を近付け、リールに語り出すレイヤ。
「うん、出てみたいなっ」
リールは瞳をキラキラと輝かせ、外の世界に憧れているとアピールする。
しかしレイヤは手をひらひらと振って、それ以上見るなと目を逸らした。

「お前…この町治安クソ悪いんだぞ?」
小声でひそひそとレイヤが呟く。
リールには理解出来ないことだった。
「ちあん……何それ?」

それも仕方無いだろう。
家の中に閉じこもり、辞書一つ開いたことの無い子供なのだ。
レイヤはそう考え、苛立つのを抑える。

「まあ危ないってことだ、外は。」
ディスプレイ越しの彼の姿は少しだけ大人びているような気がしたが本当は全くそんな事ない。
「でもみんな楽しそうにしてるよ……?」
リールが開けたカーテンにレイヤが目を移すと、それは地獄のような風景だと思った。

(こいつはそうとうだな……)
血塗られた壁にナイフが突き刺さり死体はもう無かったがそうとう気分の悪いものだ。
正直自分にとっては他人の命などどうでもいいがこの純粋な子供にこんな風景はキツイだろう。
「これをやった時にね、そのヒト笑ってた。楽しいって事?」
普通の人間がこんなこと言ったら異常だが、こいつの思考をまともな方向に戻すのはまだ間に合いそうだ。

「その考え方は止めた方がいいな、多分楽しくねぇ。」
正直俺の場合はその思考でも良いと思うがこいつは俺みたいにヒトに害を及ぼすことは仕事ではない。
という事で一応注意しておく。
「ふーんじゃあ楽しくないって事にしよう。」
こんなに曖昧で良いのかは不明だがあとは父親に任せる。
俺は教育が仕事じゃないからな。

「で、外に出たい訳だろー…?」
部屋を見渡してみても足の踏み場も無いほどの機械の山だけと言って良いほどだった。
だがレイヤが目に止めたのは机の上に置かれた一つのヘッドフォン。
それを見つけるとニヤリと笑い、リールに放つ。
「おい、あのヘッドフォンを頭につけろ。」
リールは直に立ち上がりヘッドフォンに手を伸ばした。
白に黒いラインの入った普通に目立つようなヘッドフォンだった。

「こう?」
レイヤの方を振り返り確認をすると、レイヤはああ、と頷いた。
そしてレイヤがディスプレイから姿を消した。
「へ?」

「聞こえるか?」
ヘッドフォンから聞こえた声が、脳内に響いた。