ゴースト×ゴースト小説、四人の英雄

「その力があったって死んだヒト、居るじゃん。」

周りを見渡して、黒の少年は言った。

「僕達の命は繋がってる、僕が死んだら君は死ぬしね。」

もう夢を無くしたようで、彼の瞳は深く闇を語っていた。
ファルシードはどうしようもなく情けなく感じて。
辛い想いをした過去の自分が目の前に居るのに自分はそんなこと忘れ去り、のうのうと生きて来た。

「ゴメン、僕。」

同じ紅の目を合わせた。
ここで何か出来るわけでもないかもしれない。
でも僕に出来ることが一つでもあるなら。

「僕幸せになる、君の分まで幸せになって、必ずその想いを君に届ける。」

そんな事出来ないなんて知ってたかもしれない。
僕が幸せになったって、過去の僕が幸せになれるなんて有り得ないしね。

「いいの?だって君の義務は………」

義務と言う言葉を、彼が口にした瞬間に、誰もが黙り込んだ。
そして一人一人語りだしたのだ。
一人一人に与えられた義務を。

「闇と破壊を司る事、世界破壊。」

「風を司る事、ヒトを殺す事。」

「炎を司る事、ヒトに尽くす事。」

「時と空間を司る事、ヒトを愛さない事……。」

それは誰にとっても、辛い事だった。

邪神は邪神として世界を終わらせろと、
風神は邪心に従い、ヒトを殺せと、
炎神はその心優しさで邪神に逆らえと、
時空神は時を越えし者としてヒトを愛すなと……

「義務を果たせたら…死んじゃったみんなも戻ってくる。」

誰もが一瞬俯いて、言葉を失った。
しかしカルルは笑顔を取り戻して前を向く

「仕方ないやん、ウチ等の義務やもん。」

「元々決まってたんやろ?」

だから自分達を責めるなと、ここからは自らの勝負だと彼女は笑った。

「うん…俺達神だから……精一杯頑張るから………!」

セラセードも微笑んで言う。

「その為に生きて来た。義務を果たすのは当たり前の事、だから諦めたりしないよ。」

誰もが笑顔で、不幸者達を元気付けた。
人々はその姿を眺めて、嬉しそうに笑う。
それは無邪気で、笑いたくても笑えなかった人々の姿。

「ありがとう、それなら安心。」

「俺らも頑張らないとね。」

「ウチ等必死に生きてて良かったよ。」

「応援してる、僕達の未来。」

その言葉を言い終わると、彼等は消えてしまった。
ホントに幻だったかのように空間は消え去る。

地面も灰と化し、神々は下へ下へと落ちていった。

「なんか凄くBAD END。」

デヴィーセがそう呟いた。
しかしファルシードは彼の手を取って笑顔を見せた。

「ううん、HAPPY ENDだよ。これから幸せを創ってくんだ。」

「ウォリスにも創れないおっきな希望をウチ等が創ろうよ!」

カルルは体を自由に動かし、デヴィーセに抱きついた。

「俺達が義務を果たしても、きっとこの希望は永遠だ。」

セラセードは今まで内気な性格に隠してきた笑顔を思いっきり溢れさせた。

とある神話に、四つの花が咲いた。

その後、ウォリスによって人達が創られ物凄い数で溢れ返っていった。
義務を果たす幼き神達の姿は汚れて行ったかも知れないが、人々は幸せと希望を捨てなかった。
自分達と似た思考を持つ人間と会う事に抵抗は勿論あった。
でも義務、そう信じて、それぞれの義務を果たしていく。
ただ人々は輝いていて、

そんな輝かしい人間で堕落した神達は悪に染まってしまったかもしれない。
しかし何時か人間達は気付くだろう、悪に咲いた可憐な花に。

また希望を咲かす事ができたなら………

神達は永遠の英雄と化すだろう


−後書き−
本編終了しました!
お付き合い頂いた読者様ありがとうございました!
次回から少しだけですがウォリスの過去編に入ります!お楽しみに!