ゴースト×ゴースト小説、雷の話。

あまりに優しい、少年が居たらしい。

電気の無い島を、必死に幸せにしようと努力した。

貧乏で貧しい家でも、彼は諦めなかった。

忘れ去られた人間の話。

とある少年は自ら犠牲と言う道を選んだんだって。

この島には電気が通っていなかった。
水平線の向こうに見える町の電気の明かりがとても羨ましくて、俺はこの町に電気と言うものを届けて欲しかった。
「電気ってどんなものかなぁっ」
妹は好奇心旺盛でいつも俺にそんなことを尋ねてきた。
「きっと凄いものだよ、電気があれば夜も明るくなるんだぞ。」
俺は幼い妹に、いつもそう返していた。

とある日の朝、水平線の向こうの町から一人の人間がやってきた。
島の人々はその人間に寄って集って情報を伝えてもらっていた。
その人間がこんなことを言った時に島の人々からは歓声が上がったんだ。
「近々流れ星が見えるらしいぞ、夜空を見上げてみるといいかもな〜」

俺は少しだけ興味をもって男の話に耳を傾けた。
そんな時妹はこんな質問を男にした。
「流れ星ってなあに?」
瞳をキラキラと輝かせて妹は興味津々に尋ねたのだった。

「流れ星はなー、星が空に流れるんだ。」

「その間に願い事を三つすると願いが叶うとも言われているよ。」

妹はへぇーっと嬉しそうに言った。
願いが叶うか……凄いものだなー。
だったらその流れ星に願い事を言ってこの島に電気を通してもらおう。

男が帰って、暫く経ったある日のこと。
小さな集会が開かれたのだった。

「この島にもそろそろ電気が必要だよなぁ……」
島の男が頭を抱えていった。
「でもそんな凄いもの、犠牲でも払わんとこの島には届かんかもしれんなぁ……」
もう一人の男も頭を抱えてそういった。

俺はその話を静かに聞いて考えていた。
犠牲か、だったら流れ星に頼むことは決まった。
「おじさん、心配しなくても大丈夫。俺が何とかして見せるからっ」
そう言って立ち上がると、二人の男は俺を不思議そうに眺めて首を傾げた。

そしてその夜のこと、ついに流れ星の流れる日が来た。
凄く綺麗だった。隣で妹も見惚れている。
でも流れ星の流れる速さは速すぎた。
だからと言って諦めるわけには行かない。この町の希望を諦めるわけには。

−俺を電気にして下さい、俺を電気にして下さい、俺を電気にして下さい……

三回願った。大好きな島の人々の為に俺は願った。
すると隣から妹が俺の手を握り締め、
「お兄ちゃん何をお願いしたの?」
と尋ねてきた。だが俺は、
「内緒。」
とだけ言って、ただ笑った。

そして三日経った夜のこと。
物凄い強風と雷と雨。
とても外に出られるような天気ではなかった。
今日は大人しくしてようかな……
「お兄ちゃんお腹空いたよう……」
急に妹が腹を抱えて俺に言った。
俺はその貧しい姿を見て何かいてやりたくなった。
そして決心した。
「分かった、俺が食べ物取って来るからちょっと待ってて。」

俺はすぐに外へと駆け出し、実のなる木へと向かった。
本当は知っていた。
雷の鳴る日は木の側に行くと危険だって事くらい。
でも妹を守るのは俺の役目、それに死んだって俺は電気になれるんだ。

「はぁ……はぁ……」
布切れ一枚では寒すぎた。
俺は木に触れた、実がなっているのはもっと高い場所。
手を伸ばしても届かない高い場所だ。

「ゴメン……お兄ちゃん頼りなくて。でも絶対この島に電気通すから…悲しまないで。」

薄暗い雲に亀裂が走る。
眩い光、その瞬間に凄まじい音。

俺の体を貫くように雷は落ちた。

−俺を電気にして下さい、電気にして島の人達を幸せにして下さい……

俺は幸せだったよ、みんな大好き、忘れない……

少年が死んだ一年後、その島には電気が通ったらしい……

でも島の者達は一生後悔し、少年をこの島の神にしたという。


−後書き−
雷の話!
雷と言ったらあの子ですが、全然性格違いますよね。
実はそれにも深い訳が?

少年は永遠に忘れられない記憶。
必ず電気を届けると言う約束を、少年は今も忘れはしない……
次回語られるのは3人の少年少女の話。
それは友情のBAD END

次回もお楽しみに!