ゴースト×ゴースト小説、炎の話。

火を求めた少女が居たらしい。

小さな嘘は彼女の命を奪った。

明るくて元気で、素敵な少女だったのに。

忘れ去られた人間の話。

少女は自分の嘘を心の底から恨んだんだって。

この町はありえないほど寒かった。
雪は毎日のように降り積もり、人々の生命力を奪っていく。
誰も笑いはしなかった。幸せなんて無い、そう感じている人達ばかりだから。
「ウチ寒いのに強いんやで!」

町の人々を明るくしようと、幼い少女が言った言葉。
それは嘘、当然寒くて仕方ない。
しかし誰もが少女を睨み付けた。
ある人には怒鳴りつけられ、少女は涙を流したのだった。

そんな出来事から暫くたったある日、一人の人間が少女を連れ出した。
「おじさん、何するんや?」
そう聞いても答えはなかった。

そして大分歩くと、その人間は少女を室内へと放り込んだのだった。
「乱暴やなぁ……」
長い間その室内へと閉じ込められ身動きが取れなくなっていた。
少女はいつしか不安になり、じっとしていることも出来なくなったのだ。

また暫く経ち、人間が何人か少女の前に現れた。
その人間達は少女の上着を脱がせ極力薄着にさせたのだった。
「なんや……?こんなの寒いで……っ」
服は袖もなく肩は丸出し、足も裸足、手袋も無い。
少女はあの言葉のせいだと悔やんだ。

なんでみんな希望をもたんの?

少女の細い腕はやがて乱暴な大人達に握られ、外へと引っ張られていった。
「冷たっ……」
雪の積もる上を少女は裸足で歩いた。

体力の無くなった少女をとある場所へと放り投げ、大人達は去って行ったのだ。
「寒い……っ」
凍える少女が目にした光景。それは町の人々が自分を見つめる姿だった。
雪が厚く積もる場所に閉じ込められた少女を檻越しに見つめる酷い大人達。

「寒いの平気なんだろ!!」
とある少年が笑って言う。
その後に続いて人々は笑う。

「いくら平気でもこんなの誰でも耐えられへんで……っ」

「火が欲しい…火を頂戴……!!!」

薄れて行く意識の中、必死で叫んだ。
もう死んでしまう。火が欲しいよ、火が欲しい!!

「火を頂戴!火が欲しい!!!寒いよ!!ああああ!!!」

冷たい雪の中に倒れこんで叫び続けた。
大人達はずっとウチを見ていた。

やがて意識は無くなった。ウチは死んだってわかった。

あんなこと言わなきゃ良かったなぁ。
でも希望をもってほしいよ。
神様ウチに火をくださいな。

もう、遅いかもしれへんけど……

その次の年、この町は物凄い炎に包まれ、静かに無くなって行ったらしい……


−後書き−
おうっ、山場が無い!!!!
どうしよ、文才ほしい……

今回語られたのは火の話。
凍える寒さの中意識を失っていった少女の話。
とても優しくて、希望となったはずなのに…。
次語られるのは雷の話、どんな運命が?

次回もお楽しみに!