ゴースト×ゴースト小説、交わる不幸

彼はあまり動じなかった。
驚いてはいるようでも逃げはしなかった。
さぁ早く僕に殺されるんだ。

「怖いの…?」
そんなことを言ってきた。
何で?僕が涙を流してるからなんていうの?
馬鹿みたい、僕は人を殺すことに飢えているんだ。怖いはず無いだろ。

「ねぇ…怖いんでしょ?」
人の心配より自分の心配をしろ。
もう早く殺そう。

ナイフを振り上げて、さあ準備は完璧。
「俺を刺したら君は不幸になるの?」
そうかもしれないね、でも義務だからお前を殺せなかったら僕は殺されるんだ。
不幸なことは変わらないよ。

何も言わない僕に腹を立てたのか彼は僕の腕を握った。
ナイフはまだ振り上げたまま。
「俺が自分で刺すよ、さあ貸して、その…ナイフ。」
僕を殺す気?ねぇ…それとも……

落としてしまった、鋭い刃。
白の少年は迷わずそれを拾い上げた。
その顔は穏やかに笑っていた。
なんで?僕と居て笑えるの?

そして自分に向けた。
「ねぇお前死ぬってこと、分かってる?」
思わずそんなことを言った。
闇に染まった心に、助けたいなんていう感情が芽生えていた。

「大丈夫、どうせ死ぬんだもん。」
その笑顔は眩しかった。白くて、僕とは正反対で。
笑わないで……笑ったらダメだ………!!
こんな世界で笑うなぁ!!!
「死ぬって……痛くて苦しいんだよ!?」
なんでこいつを庇ってるの?
僕って頭悪いな………。
でも放っておけない、彼が報われる方法は……

でも彼は、僕の黒いコートをそのナイフで切り裂いて、フードを脱がした。
「だって、君が殺すなんて君が可哀想。」

「君、俺より小さいじゃん。」

紅い目を見て、笑った。
そういったすぐ後に、彼は自分の腹にナイフを突き刺した。
「……っ」
僕は何も言えなくなった。
どうしてだ、何故だ。
彼は倒れた。
死んだ、ああ、死んだ。
いつも通りの結末だ。
でも少し違って。

何で自分で死んだ。
何で僕に殺させてくれなかった。
殺すのが僕の役目と言ったばかりなのに。
いや口では発して無かったかな…。

欲しい欲しい。
人を見ずにでも殺せる破壊の力。
欲しい欲しいっ。
人を迷わずに殺せる闇の心。

「欲しいよ…欲しいよ…!」
そう、いつまでも言っていた時、黒服の大人達が僕の下へとやってくる。
「何故お前が殺さなかった!!!」
大人達はあまりにも酷いことを言った。

「ごめんなさい……」
そうただ謝るだけだ。ごめんなさいごめんなさいごめんなさい………
「役立たずめ!!」
そんなこと言わないでよ、僕今まで頑張ってきたじゃないっ
ずっとずっと苦しかったのに、逃げもせず頑張ったじゃないか!!
親もいない兄弟もいない、闇の世界でずっと一人。

でも頑張ったよ!
いつかは報われるって頑張ったのにどうして!?

…いつかは誰かと笑えるって………

「酷いよ!!!」

そう、言い切った。
でも大人達は………

バンッ…

銃声が聞こえたときに僕は倒れた。
良い武器を手にとって、僕を殺した。
一番楽な殺し方、ああ、なんて酷い世界だ。
神様が居るなら願おう。

「…破壊と…闇を……僕にください…神様…っ!」

僕はそう言って、あまりにも不公平な世界を笑った。
僕の意識はそこで途絶えた。

本当に神になるとは、思ってもいなかったけど。


−後書き−
自分で書いてて切なくなります((
ああもっと文才があったらなぁ

二人の少年が同じ大地に倒れた時、その町は闇に覆われたという。
月が登り夜の世界へ。
それは闇に生きてきた黒のゴーストの少年の復讐だと言われた。
それは今ではヘルムーンと呼ばれる月光に照らされる美しい町へと変わった。
それは神の祝福で。

次回もお楽しみに!