ゴースト×ゴースト小説、風の支配

ゴーゴーと吹き抜ける強い風が俺の体を強く押す。
「……此処は……聖域……聖域……聖域……」
誰にも聞こえないような小さな声でぶつぶつと呟いているのが自分でも分かる。
何してるんだろ、馬鹿みたい。

−運命に立ち向かわないの?

とある時空神の言葉。
「…立ち……向かう……」
虚ろな瞳。端から見れば、随分と可笑しく見えるだろう。
何度も何度も自分に言い聞かせるように。

「好きですね。」

「……え……?」

そこには美しい女性が居た。
その直後、彼女は頭に触れた。

「こんな風の中……寒かったでしょう。」
頭から背中に手を移動し、自然に柔らかく抱きしめられる。
「……な、なに……?」
冷たい、か細い手で、彼女から離れようと必死に押すが、
「大丈夫、悪いことはしません。」
なんて、彼女の声の方が大きくて、かき消されてしまう。

「あ、あの…………」
こんなに近く触れられたことなんて無かった。
高鳴る鼓動はいつまでも。

「離して………っ」
そんな言葉を言うにも、俺にはこんなに勇気が要る。
しかし彼女は離す様子が無い。
何で……俺に何するの………
「あなたは誰の味方ですか?」

「えっ……味…方……?」
瞳だけは見せないように、そう考えながら何が何だか分からないことを言う相手に聞き返す。
「邪神ですか?それとも緑神ですか?」
優しい声、まるで子供をあやす様な。
「両方……」
無難な答えって一体何なんだろう。
「あの子達は敵同士ですが。」
それって本当?
「ホント……?」
嘘でしょ、だってこいつが敵って聞いた。
何年間もずっと嫌われてきたこいつが言うことなんて嘘に決まってる。
「本当ですよ、だからあなたはどうしますか?」
どうするなんて……お前が教えてくれよ、誰の味方をすればいいか。
「誰の味方が一番正解?」
馬鹿な質問。一体なんて答えるの?
「勿論私の味方です。」
彼女は笑った。前髪越しに見えた笑顔は何だかその笑顔に溶けてしまいたいほど温かかった。
「そしたら……誰も死なないの?」
そんな馬鹿な質問をした。こんな誰も死なない世界で。

「死にません。その為には私の言う通りに行動するのです。」

そう言った時、彼女は俺の前髪を上に掻き揚げた。
「……!?」
その一瞬で彼女のことが怖くなった。
俺の目を深く見つめて、こう言った。

「上手くやれば……」

「あなたのその目、怖くないモノにして差し上げましょう。」

その言葉に、俺は完全に洗脳でもされてしまったのだろうか。

「分かったよ、必ずあなたに従います。」

そう、微笑んでしまったから。


−後書き−
なんか最近後書き真面目に書いてたから真面目続きの方がいいのかな??w
それとも下書き一覧余談で埋め尽くす勢いの方がいいのかな?うーむ

内気で自分に自身があまり無いセラセード。
ついにそんな彼にまで関わりを深めてしまうウォリス。
セラセードの内気な性格に隠された風の力、ついに放たれてしまうのか?
−若者達よ、今こそ運命に立ち向かえ!

次回もお楽しみに!