ゴースト×ゴースト小説、真の思惑

「殺せなかったのですか?」
美しい横顔が薄い青髪から覗く。
「ああ、でもあいつには助かった。」
勝てなかったことは素直に認め、それでも顔は見せず、呟いた。
「珍しい、貴方が他人に助かったことを口にするなんて。」
彼女は珍しく素直なイングリーネに微笑んだ。

しかし彼女にはそんなことどうでも良いことに近かった。
「でも必ず殺めなさい。貴方はその為の存在なの。」
と、笑顔を消して言う。
それにイングリーネは笑う。
「分かってる、必ずこの手であいつ等を敗北に導く。」
怪しい笑みを浮かべたその後、少年は休む間もなく、すぐ外へと飛び出して行った。

「…愚かな子ね、運命は貴方の敗北にあるのに。」
哀れむ瞳。美しいのに酷く勿体無いものだ。
しかしウォリスはイングリーネを助けない。
助ける意味など無いと考えているから。
運命に踊らされるイングリーネを見て楽しんでいるのだから。

イングリーネは知っていた。
本当は自分などただの駒に過ぎないことを。
「ああ哀れだな……だが俺の体は好きに使え…お前の気が済むまで……」
届かぬ声を遮る壁の向こうで吐き出す。

ウォリスのことが好きな訳じゃない。
むしろ嫌いだ、大嫌いだ。
ファルシード以上にゴミクズだろう。
だが悪役には使える者が必要なもの。
デヴィーセもカルルも居なくなった今、彼女に仕えるのは俺しかいない。
彼女が望むシナリオに最終的に俺の姿があるかは分からない。
だがこの悩み苦しむのも、最後には運命どおりになってしまう。

「愚かだろ、笑うが良いさ。だが今に見てろ、この俺が最高のエンディングを作り上げてやるから…」

その言葉は素直じゃなくとも、正義の言葉。
悪役なんて二人で足りる、十分すぎる。
俺が最高の悪役になり、最高のエンディングを作り上げ、正義のメンバーが歓喜に祭る。

そんなエンディングを作ってやるから待ってろ。

「だから見せてやるよ。今から俺が……」

十分すぎる最期を。


−後書き−
この子もキャラが濃くなってます((
ちなみに神様の中で誰が好きとか居ますでしょうかw
居たら是非教えて下さい!朱音のお気に入りとか聞きたい?((殴

ウォリスに忠誠を誓う雷神イングリーネ。
神達を殺す暗殺者として嫌われる彼の思惑は想像以上に深いものだった。
ついに明らかになった彼の想い。
しかしその想いは誰にも理解されぬまま。
彼の理想は叶えられるのか?

次回もお楽しみに!