ゴースト×ゴースト小説、悪と悪

「イングリーネ!!」
何度も何度も揺すって起こそうと必死になる。
どうしてだろう。僕はこいつの敵なのに。

起こしたらきっと、イングリーネはまた僕を殺そうとする。
でもデヴィーセは言った。確かに言った。悪い子じゃないと。
信じられないけど、デヴィーセが嘘をついているとは思えない。
「ねえ起きて!イングリーネ!!」
耳元でそう、叫んでやった。
すると、

「……何だ…クズ……」
鬱陶しそうに、イングリーネは目も開けず呟いた。
「わっ…良かった!起きた!!」
思わず歓喜に叫んでしまったファルシード。
「うるせぇ!少しは黙ってくれっ」
イングリーネはそう怒りを表すと目を開けて怒鳴った。
「元気で何よりだねっ」
そう黒の少年は素直に微笑む。
しかし素直じゃないイングリーネは、
「馬鹿かお前は、俺は敵だぞクズ!」
と、ファルシードが考えた上で起こしたことを知らずに言う。
「そんな事知ってる!でも君はきっと…」

「悪くないとでも言うのか」

そう小さく呟くイングリーネ。
その台詞を言い終わると無理に体を起こし、立ち上がる。
そしてファルシードを指差し、
「良いかゴミクズ、今俺を助けたこと、必ず後悔させてやるからな!」
いつものように黄色の瞳で睨みつけ、彼は雷鳴を轟かせた。

そして雷に呑まれ消えるのだ。

「うん、後悔するんだろうな…」

ファルシードは笑う。
この上なく素直に微笑む。
大嫌いな正義を振り翳し、悪を捨てた瞬間だった。

悪を捨てられないと知りながら。


−後書き−
37日間継続中だってwダイアリーww
朱音自分でよく頑張ったと思うんだ((

対立する悪と悪。
ウォリスを巡って始まる対立はまだまだこれから。
そしてイングリーネの本心は暴かれぬまま消えてしまう。
ファルシードは正義を捨てきれず、悪を知らない振りを…
それぞれが持つ心の闇。
誰もが誰も正直になることは出来るのか…?

次回もお楽しみに!!