ゴースト×ゴースト小説、神の風

息が苦しい。
走った、それもとても長く。
隣に、黒い少年は居ない。
−僕が居る
今は…居ないけど。

しかし目立つ。ここまで髪長いと目立つ。
ばっさり切ってしまおうとも考えたがそれではダメだ、神の世に戻った時何て言われるか分からない。
「このまま…ファルに会うんだ…っ」
会えますように、そんな願いをかすかにしながらセラセードは動き出した。
目指すは時計塔。
人間に見つからないように荒らされた町を歩く。
意識は全て、見つからないことに集中させているのに、さっき人間言われたことが頭に強く残っている。
『お前達のその紅い目…、不吉の目だ!』
不吉の目…それって何?
神なのに…そんなこと人間に言われて傷ついてんだ…。
馬鹿馬鹿しい、所詮人間、まともな思考も無い。
ファルのことも俺のことも敵にして…。
消してしまいたい。
「ぶっ潰してやる…」
なにかが壊れて、気付けばそんな思考に変わっていた。
腰の剣を抜き、人間と目を合わせた。
「居たぞっ!」
「捕まえろぉぉ!!」
一斉でかかってくる。
殺される、殺される、殺される・・・
「殺されろ」
人間が、な。
俺は風神、神をなめるなよ、愚かな人間。
「殺してやる……殺してやる…!」
剣を振り上げたら、風が集まった。
あぁ、これが力か。
いいね、快感。
殺せる、疑った人間を。
殺せる、殺せるよ、一斉に殺せるよ!
「死ね。」
振り下ろした刃の先から強風が吹き荒れた。
叫び声、聞こえる。
「やっちゃったよ、ファル…」
セラセードは、その場から去った。

長い髪が、微かな風に揺れた。