ゴースト×ゴースト小説、合うことのない視線の先。

「アルネス・・・・・」
彼は俺を見た。
茶色の髪が目にかかり、よく表情が見えなかった。
でも口元は何故か笑っていた。
「・・・久しぶり・・・だね、元気だったかい・・・?」
何故笑う?何故そんなことを聞く?
死にそうなのに・・・、苦しいはずなのに・・・。
「頭・・・可笑しいんじゃないか・・・?」
何を言えばいいのだろう。
何を言えば彼は救われるだろう。
「そうかもしれないね・・・元々頭なんて良くないよ・・・」
何故涙が溢れる?
何故こんなにも苦しくなる?
何故?
関わりなんてなかった。
何故?なぜ?ナゼ?
「馬鹿・・・・・・」
涙が頬を伝って地へ落ちた。
アルネスはそれに気付いた。
それに彼は焦った。
それでも彼は笑顔を取り戻した。
笑うな、こんな時に。
笑うな、こんな場面で。
笑うな、こんな世界で。
「泣いてくれるんだね、俺なんかの為に。君は優しいね。」
か弱い声が震えながら耳へ伝わってくる。
彼も泣いた。微笑みながら、泣いた。
「もう俺は誰にも必要とされていないかと思っていたよ・・・、良かった、最期の最期で愛されていることを知れて・・・・」
彼は笑うんだ、とても嬉しそうに。
彼は笑うんだ、とても苦しそうに。
彼は笑うんだ、とても悲しそうに。
彼は笑うんだ、とても儚く。
彼は笑うんだ、何も知らずに。
何も言葉が出てこない、何を言ったらいいの?
死ねという?
諦めるなという?
馬鹿かという?
何だ何だ何だ・・・。
一体なんなんだ、俺の気持ち。
「あのね・・・、俺多分もう死ぬよ。」
分かってるよ、見れば分かるよっ。
「あのね・・・、辛い思いはしないでね?俺が死んだって・・・君は大丈夫なんだから。」
何が大丈夫なんだ。
辛いよ痛いよ悲しいよ。
「大丈夫じゃないよっ・・・」
涙が止まらない。
「優しいなぁ・・・死に際だけど死にそうに嬉しいよ・・・。」
俺が涙をボロボロ流してる内に、彼の命という名のタイムリミットはどんどん減っていった。
「じゃあそろそろ死なないとだめかなぁ・・・。」
そんなことを言うときまで笑うのか。
馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿。
「じゃあね。あ、それと俺ゴーストになるつもりなんだ〜・・・だからまた会えるといいね・・・」
死に際に楽しそうにべらべら喋って、こいつは大丈夫なんだろうか。
そんなに嬉しそうに何もかも話して。
ようやく目を閉じた。
そして彼は笑った。
笑って口を開いた。

「ありがとう、フロウっ」

声を弾ませて言った。
彼の最期の言葉。
あーあ、死んじゃった。

「・・・さようなら、アルネス。」

俺の口は自然にそう語っていた。