ゴースト×ゴースト小説、優しさの結晶

盗みなんて、何が楽しいんだろう。
結局は人の夢を奪う最低な行為なのに。
この悲しみと切なさの中に、俺は誰かの優しさを求めているだけだ。
あんなに人の冷たい心を見てきけど、どこかの誰かはもしかしたら…
「俺に本当の優しさを見せてくれる…?」
こんな嘘つきで強がりな俺に…。
一番最初に優しさを俺にくれて、死んだ人がいた。
そこまで深く関わってないけど…。
彼は確かに優しかった。
死んだ彼から盗んだ、髪飾り。
そんなに高価なものじゃない。
ただ光に輝く結晶のついた物。
でもそれには人の優しさが詰まっているような気がした。
何故か捨てられなくて、優しさを捨ててしまう気がして。
でもそれでも、人の優しさを忘れかけることがある度、髪をほどいて髪飾りなんて投げかける。
「優しさなんてきっとこの世界に欠片も無い」
そう考えて心が凍りついた時、視界は紅く染まり、人である事ができなくなる。
そんなことを繰り返して飽き飽きしてしまった血だらけの人生も、俺はただの髪飾りに惑わされているだけなのかもしれない。
とても、悲しい人生だ。