ゴースト×ゴースト小説、僕が俺になる為に。

「渡さない……イフレは…!」
怖い、ゴーストなんだ…今目の前にいるのは。
僕に勝てるとは思えない。
イフレだってこんなに怯えてるんだ。
でも死ぬなんて嫌だ。
ゴーストは笑ってる。
そうだろうな、無力な子供が怯えてるんだ。
楽しいんだ。こいつらは。
「……フロウ兄……」
震える声で呟く小さな弟。
僕の服の裾を握り締め、目を閉じて……。
「怖い……」
弱い僕は目を閉じる。
怖いんだ、とっても……。
もう………死ぬんだ…。
僕は諦めた。もう無理だ……と。
でも聞こえてきたのは銃声ではなく、
「止めろ……化物っ」
もう苦しくて、死んでしまいそうに押し殺した、震えるイフレの声だった。
「うわああああ!!!」
瞳を血のように紅色に染め、泣き叫びながら剣を振る姿を僕は静かに見ていた。
僕達を殺しに来たゴーストは、かなり上手のものだったのに、イフレは動きを読みきっているかのように相手を斬りつけていた。
やがてゴーストが倒れた。
イフレは大量の血を浴び、疲れきったのかゆっくり瞳を閉じ、ふらふらと倒れる。
足がすくんで立てず、座ったままずるずると弟に近づき、彼の頭に触れる。
血に紛れていて気付かなかったけど、彼は泣いていたんだ。
紅い、紅い、涙を流していたんだ。
「僕が弱いから…僕が…僕が…!!」
強くなりたい、そう思った。
誰が止めろと言っても、僕は強くなりたいと思った。
大切なモノを守れるようになりたいんだ。イフレはそれに気付かせてくれた。
僕が僕であるうちに変わりたい。
力なんて手に取ったら、すぐに自分を壊してしまうものだから。
「さよなら…イフレ、僕が僕であるうちに、君に言っておくよ。」


「僕達は…兄弟だから…強大なんだ…強いからっ」


泣き出す寸前、僕は強くなるためにイフレを置いて家を飛び出した。
僕は「俺」になる為に。
イフレは目を覚ましていたけれど、俺はもう振り返らない。


「さよならっ!!」