ゴースト×ゴースト短編小説、擬態の

どーも、こんにちはー!朱音です!
明日から高校生活なので、忙しくなる前に!フロウとソウルのその後、かな。
前回の成りは色々あったので、その分色々考えながら書きました←
割と初期の方から思ってることですが、フロウはどうも自分の感情やら心情やらに疎そうなので割とその辺は考えながらやってます。
苛々する、とは言ってたワケですが多分理由は分かってませんね←
なので、今回はその辺のことも踏まえながら書いてまーす!まあ暇なら読んでください!ではどーぞ〜!



思い返せば気が狂ってしまいそうな程の現実に生きながら、這う様にして此処に居る。
強ち彼が言っていたことは間違っていないのかもしれない。
初めて彼と会った時からのことを思うと、随分人が変わったかもしれないと自分でも思う。
自分でも気付かないうちにニセモノに成り代わっていたのかも、なんて、少し思うけど。

あの頃は正直誰も信じられなかったのにな。今も彼以外を信じることはできないワケではあるが。

光に照らされれば影は自分の背後に何時だって出来る。
どんな時だってそんな形無いものに嗤われているような錯覚をするけど、それは別に幼い頃から同じで、何時も誰かに指をさされて馬鹿にされていると思って生きてきた。

ヒトの目程、恐ろしいものはない…そうでしょ。

「悪趣味だ。自分が陥れた相手を観察するなんて。」
振り返らなくても分かる。お前は影と同じだ。何時だって近くに居る。
「別に陥れた気はないよ、あんたはね。」
こっち向いてよ、なんて誘うから睨むように見てやると、そいつは一瞬驚いてすぐにいつものように笑った。
「嘘がホントになるってヤツ?あんたそんな顔できたっけ。」
燃えるような青い光を纏って、長い髪は風が無くとも流れるように漂う。
こいつはきっと真実を知っている。人を嗤うときと、貶めるときしか、こいつは会いにこない。

「レディアの心を殺そうとしたの、お前でしょ?」
何も余計なことは考えなくていい。今必要なのは彼を救うための手段。他には何も要らない。
不思議だけど、そう思うと言葉は勝手に出てくる。本当に嘘しか吐けなくなったら、俺嫌われちゃうかな。
それは嫌だな。でも…もう、そうすることくらいしか、こんな世界で生きていく方法…ないかな…。

そいつの言葉を無視して問うと、途端につまらなさそうな顔をして舌打ちをした。
「…別にそうだけど、それ知ってどうすんの。お前なんてどうせ…」

彼の言葉がそうだと言った瞬間に、何かが外れるような、狂うような、そんな感覚がした。
今までにない新しい感覚。…目の前のこいつを見るのが、不快で不快でどうにかなりそうだった。
ああ、そうなんだ。こいつがやったんだ。こいつが俺の大事なものを奪おうとした…。
…それだけで十分だったはずなのに。もうこれ以上、すべきことはないはずなのに。

気付いたら、俺はこいつを殺そうとしていた。縛られていて、どうにも操りにくい力を放ちながら。
死なないと分かっているのに、頭では。止まらなかった。ただ、体が芯から熱かったことしか分からなかった。

自分でも驚くほどに急だったので、避けることもないままに邪神としての力はそいつを刺した。

「割と痛えんだけど…」
不機嫌そうにはしているが、大してどうともなさそうに、そいつはそう吐く。
黒い粒子が傷口に集まって、同じそいつを模るのを、ただ呆然と見ていた。

「なんか今日のお前ヤバそうだから、俺もうどっか行くね〜。」
手をひらひらと振りながら怪しく笑って、そいつはそう言う。ただ面白そうに、俺を嘲笑うように。

「それとさ…」
綺麗に治った身体を宙に舞わせて、俺の瞳を貫くようにこちらを見ると、そいつは俺の心に焼き付けるように言葉を降らせた。

「無理にニセモノ繕うの止めた方がいいよ。あんたの自制の効かない心じゃ、何もかも壊すことになるから。」

それを言うそいつの顔こそよく見えなかったけど、始めは何も理解できなくて、立ち尽くしていた。
どうせ大したことじゃない。こんな悪魔が言うことなんて、当てにする方が間違ってるんだ。
「じゃあね」なんてその場に音だけを残して消えたそいつのことを、すぐに忘れようとしたのに。

…ああ、何故?よく分からなかったさっきの言葉が頭に延々と響くようで気分が悪い。

「……あ…」
やっと頭が冷静さを取り戻したみたいで、身体の奥の熱さを確かに感じられるようになった。
その正体が分かるかといったら、違うけど…。

熱さのせいか、この良く分からない心情のせいか、とんでもない量の汗が吹き出した。
なんだ…、一体何が起こってるんだ…?

どんな暑い日も、悪夢を見た夜も、こんなに汗をかいたことはない。
いつしかその汗が、冷たく堅い地に雨のように染みを作りはじめた。

いけない…。きっと熱でもあるんだ。呼吸も少し、し辛いし。早く休まないと、彼を心配させてしまう。
でもよかったな、本当のことがわかって。きっと喜んでくれる、俺は変われたんだ。ちゃんと怖がらずに自分と戦えた。

嬉しい、嬉しいな。…嬉しい、はずなのに…。
…どうしてこんなに、気持ちが晴れないんだろう……。

…また今日も自分の影に嗤われている気がして、どうにも気分が悪かった。