ゴースト×ゴースト小説、終わりのウタ

俺に優しく微笑んだ。
でも血を浴びてて、それでも嬉しそうで。
前髪に目を隠して、引きつった笑みを浮かべているの。

−やっと会えたね。

何て言う。
世界はもう終わるんだ。
全ての終わりを告げて、自分達だけの世界になった。

−もうずっと二人だよ、もう怖くないよ。

それが幸せだなんて限らないんじゃないの?
誰一人、人間が居なくなって…
お前が、殺したって言うんだろう?

−人間様が死んでくれたんだ、僕とセラの為にだよ。

それって本当?可笑しくない?
セラって誰だ、俺だって言うの?

思わず後ずさる、それに彼は笑みを消す。

−僕が怖いの?君の為に、頑張ったのに…。

違うよ…、誰だか分からないんだ、お前が…何を思ってるのか。
心臓が破裂しそうに高鳴って。
息が上手く続かずに。

−大丈夫だよ、もう終わったんだから。

−人間と居る時間が消えたんだから。

それでいいの?これは何なの?
俺が誰で、お前が何なの?
此処は異世界だろ、どこかの。
現実じゃない、嘘なんだ。

「ねぇ俺って誰なの?」

−君は君だよ、僕の大切な人。

大切な…人……。
そんなこと言われても…、何も分からないよ。

「ゴメンね、ファル…」

ファルって誰?何を言ってる?
ダメだ、もう、頭が回らない。
苦しい…、何かが俺を押さえつけてる。

−その名前で、呼ばれるなんて…嬉しいね。

そう言うと、彼は笑って、闇に消えようとした。

「待って…、まだ聞きたいことが…」

−まだ教えるのは早いよ、また…今度ね。

今度っていつ?
視界がぼやけていく。

俺はまだ、不完全のままだった。